Re:トライカクテル 公演情報 けったマシーン「Re:トライカクテル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    なかなか楽しめた
    狭い「楽園」の空間をうまく生かし、カフェバー公演風にしたのが面白い。このところバー公演で良い物に当たらなかったので、「掘り出し物」に思えた。
    クリスマス物として悪くはないし、前回の作品よりは進化しているように感じた。
    この作者は回想を入れた謎めいた作品が好みのようで、背伸びをして荒削りな点もいくつか見受けられるが、私は作品に好感を持っている。
    まだ若い人らしいので、伸びしろはありそうだ。
    やはり年を重ねて身に着けていくものはあると思うし、事実、学生時代から観続けている劇団の作家もみなそうだったのであまり心配はしていない。
    実のところ劇作には全く向いていないと思われる作家もときにはいるが、この作家はそうではないと思う。
    内容の感想はネタバレにて。

    ネタバレBOX

    前作より短い70分物というのが良かった。あわただしいバー公演をいくつも観ているせいか、ゆったりしたテンポを楽しめたし、珍しく時計を見ることなく過ごした。ただ、長めで無言のジェスチャー場面が多いのは気になった。
    何事も中途半端で煮え切らず、表情も乏しいサラリーマン三田(高山五月)。職場で同期の男(斉藤央)が出世して上司になり、ほとんどいじめ状態にあっても、満足に自分の心情も話せない。こういう人を私は身近に知っているので共感がもてた。
    私が一番気になった点は、マスター(小野寺駿策)の編集者の妻(木畑舞子)がしょっちゅう夫の職場であるバーにやってくること。最近のTVドラマにも多いパターンで、舞台設定と進行上しかたがないのかもしれないが夫婦だとあまりありえないことだ。せいぜい婚約者の設定にしておいたほうがよかったと思う。また、妊娠がわかってからの妻の飲み物は明らかに水とわかるものだったが、台詞でそれをわからせたほうが親切だったのでは。
    作家志望の三田と編集者の描き方も安直さは感じた。
    パンフに配役が載っていないのは、小説の登場人物である男女(宮尾政成、後閑真純)の存在を伏せたかったためだと思うが、彼女の浮気をほのめかす上司の発言もあるので、この「彼女」が別の「彼氏」とデートしてるのかと誤解するようにも見せているのは、なかなか巧いと思った。
    三田がサンタとも読める役名もいい。
    マスターが妻の妊娠をガンのような重病と勘違いしたり、常連のタマキ(角北龍)が彼女に買ってやったコンサートのチケットが実は近藤(坂本真太郎)に関係しているのではと思わせる笑いの場面も、あざとさはあるが面白く観られた。善意の人間関係によるきれい事にまとめず、近藤に「三田の苦境は自業自得」と言わせるのも観客を代弁しているようでよいと思った。
    登場人物の男女の会話によって三田が事故にあって死んだと思われるが、そのあとの最終場面が、上司も交えてやけに和気藹々としているのを三田が眺めているというハッピーエンド風なのが違和感を覚えた。冒頭のサンタが人を殴る場面もサスペンス風だが、内容がサスペンスではないので、あまり効果的には感じなかった。むしろないほうが良かったと思う。
    前作とは違う役どころを演じた高山と坂本、前回よりは「間」がよくなっていた小野寺など、前回の公演メンバーの変化もうれしく感じられた。
    海賊ハイジャックの斉藤の現代物も客演ならではの新鮮さだ。
    今後、作者が劇団員ともにどのように成長していくか、長い目で見守りたいと思っている。

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    2010/12/20 03:52

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