ある夜をめぐって 公演情報 パンケーキの会「ある夜をめぐって」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    パンケーキの会初観劇がcafe音倉での「壊れたガラス」リーディング。古典に属する作家の戯曲発見の喜びと共に記憶に残っていたので、これを再度取り上げるという事で楽しみに出かけた。緊迫の時間を作ったリーディングが、今度はストレートプレイとして駅前劇場にて立体化(2演目をやるというから両作品共リーディングか?とも想像していた)。舞台化によって緩まるどころか、スケール感も大きくなり休憩無し2時間超えにして緻密に構築された舞台となっていた。
    この濃密さは昨年末同じ駅前で上演された「Downstate」を思い出させたが(これは読売演劇賞優秀作品賞ほかの賞を獲るに至り、我が意を得たりだった)、何十年前の戯曲、しかも当時の世相にコミットした時代性の強い作品が、現在を仄かに示唆する力を持ち得る事に感慨を禁じ得ない(劇評家が書きそうな文言で申訳無し)。
    本作はナチスドイツが台頭する時代背景があり、アメリカのとある町では遠い場所の出来事となっている。主軸はある夫婦を襲った健康上の問題(夫人の足に麻痺が起きた)であり、夫はユダヤ人。彼らを取り巻くのがその治療に当たる医師(夫の知人でもあるユダヤ人医師)、その妻、夫人の妹、夫が勤める不動産屋の上司(=社長)で、ドラマの縦軸が治療の過程、それも精神的な、という事もあって、人間の内部へと分け入って行く。その過程で登場人物らの実像も場面を重ねるごとに見えて来る面白さ、感動がある。人物全て、不明な状態からまるで人が知り合って行く過程を経験するかのようであり、彼らは決して観客を裏切る事なくストレートに真実の姿へ近づいて行く(ドラマを盛り上げる都合のための言動が皆無であり必然性がある、と思わされる)。
    戯曲の力と共に、俳優の造形力にも圧倒される。全てが噛み合って舞台という仮初の場に「確かに存在した」人間の時間を精巧に具現させた事への感動は、演劇の最も上質な部類の感動である事を再認識させる。ベタ褒めである。

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    2026/01/30 22:44

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