公演情報
理性的な変人たち「口いっぱいの鳥たち」の観てきた!クチコミとコメント
実演鑑賞
満足度★★★★
キャリル・チャーチルという英国女性の書き手を知ったのは、書物の中で著名劇作家の一人として紹介していた事からであったので、過去の人という認識だったのだが、実は息長く第一線の人であるらしい。昨年漸くその上演を初めて観て、その挑戦的な筆致と筆力を知るに至り、この度は注目の女性ユニットによる舞台という事で楽しみに待った一人である。
もう終わってしまうが、お勧めの舞台。
とは言え、晦渋なテキストである事、そのため、少々狭い客席が苦痛となる時間はあるかも知れない事を、お断りする(休憩はあるので大丈夫・・つってももう公演は終わるけれど)。
難解ではあるが、舞踊をバリエーション豊かに組み込んだり、演出の妙で刺激的な時間となる。以前観たシヅマの「最後の炎」が同程度に厳しいテキストながら演出の妙で最後まで観られた感じに近い。折り重なる言葉が最後には深く心に沈潜して小さく発火する。
トークによれば本作はキャリル氏が別のもう一人の脚本家と振付家、そして俳優たちとのワークショップによって作り上げた舞台で、「その時その場所その俳優たち」との作業によって成立した上演であったらしく、書籍化もされていない(恐らく上演記録だけはあった)作品を翻訳作業から立ち上げようとした企画であった模様。
ここに書いてしまえば、英語版台本の翻訳監修として松岡和子氏に相談した所、以前とある学生二人がキャリル・チャーチル研究の一環として本作を翻訳したものを送って来ていたとの事。これを底本に借用し、難解な本作の台詞の背景や文脈解釈を試み(出演もした岩﨑MARK雄大氏も当初から関わった一人という)、複数のキャリル研究者たちにも質問を投げ、舞台化を模索し、伊藤キム氏の振付の力も借りて上演に辿り着いたという苦労話が、若い研究者である金田迪子氏をゲストに展開。真摯な研究姿勢が窺えるような語り共々興味深く聞いた。
ウエストエンドスタジオも久々確か3度目の訪問で、地下の立方体に近い四角い箱のコンクリの土間へ、幅広めの階段で下り、二面、四段の客席の一角に収まる。ひしめいている。そして開演。豚に恋をするビジネスマンの話、アル中治療中の娘と母のくだり、性的異形の身体を持つ男(女)の二度と訪れない只一つの恋の告白・・また本作がモチーフとしているらしいギリシャ悲劇「バッコスの信女たち」の断片など象徴的な場面たちも織り込まれていたようである。ワークショップから立ち上げた複数の筋から成る作品でも、高度なテキスト構成及び演出手法で一演劇作品に昇華され、東京藝術大学出の変人たちの立ち姿を面白く見る事ができた。