パーク 公演情報 甲斐ファクトリー「パーク」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い。
    2つのコトが緩く繋がって、人間と社会の或る共通の言葉「不寛容」が浮かび上がる。登場するのは普通の人々、そして街中にある公園のベンチを舞台に、得体の知れない心の桎梏のようなものを炙り出す。

    人それぞれに正義や真実があり、そのぶつかり合いを通して蟠りを解消していくのだが…。それを日常の出来事に落とし込んで分かり易く描いている。少しネタバレするが、登場するのは 公園のベンチを大切にするオジサン 佐藤を中心に、近所にあるスーパーのパート職員、公園を管理する市役所職員という設定が妙。パートのシフト調整の場面や市民の声という建前で強権を振るう行政、そこに それぞれの思惑 そして軋轢が透けて見える。

    一方、佐藤と公園の近所に住んでいる若い女性 リンコ、この2人は心に闇のようなものを抱え その心中は複雑。2人にもウソと真実があり だんだんと露呈、それが許容できるか否か、理屈では言い表せない心の内 感情を見事に描き出す。
    この2つの話が絶妙に交差し 普通に潜む<闇>のようなものが怖い。
    (上演時間1時間50分 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、全面芝床 中央奥に木製のベンチ その傍に街灯。何となく別役実の世界を連想。

    物語は晩秋、昼頃やってきてベンチを拭き掃除する 佐藤を中心に何気ない日常に溢れている不寛容が浮き彫りになっていく。佐藤は、亡き妻がこの近くの病院に入院していたことがあり、2人で散歩にきては このベンチで語らった思い出の場所。しかし公園にある鉄棒でケガをした子供がおり、市役所が鉄棒の撤去を検討。砂場、ジャングルジムなど遊具が次々に無くなり…。ベンチも横になり そこで寝てしまう人もいる。これから寒くなり凍死でもされたら困るという危機回避から居心地の悪いベンチへ。

    親にしてみれば、子供を守るという(正義の)主張があり、市役所は市民の声に耳を傾けるといった建前のもとに対処する。子供のケガは捻挫であったが、いつの間にか骨折という大袈裟な話へ、市役所は 市政に都合が良くなるように市民の声を誘導する。公園の在り様についても 遊具=危険と判断され撤去、そして子供の声が煩くて というのは現実にあった話で話題にもなった。遊育といった考え方は 難しくなったような。

    佐藤の妻との思い出話は 嘘。リンコの友人 吉田が 別の街で佐藤を見かけたと。佐藤の話ー山梨でブドウ園経営、妻とは死に別れーに心酔していたリンコは怒る。彼女は子供の頃から 母に嘘はいけないと言い聞かされていた。佐藤の嘘を暴き糾弾、ここでは社会的な正義ではなく個人的な感情を露悪的に描く。子供のケガに端を発した遊具撤去、それに対応する行政、そしてスーパーのシフト表は、それぞれの立場による主張。しかしリンコの怒りは、佐藤の出来心(嘘)が許せない。先鋭化した正義感は、歪な人間関係によって 人を傷付けてしまうこともある。社会的風潮と個人的感情を巧みに絡ませ「不寛容」といった世相を炙り出している。

    佐藤を演じたトラ丸(伊藤 順)さんの 貧乏ゆすりのようなしぐさ は心の落ち着きのなさを表し、それを強調するかのような照明の明滅が印象的。不穏を煽るようなピアノを始めとした音楽も効果的で、公園全体を覆う不安・不穏といった雰囲気を醸し出していた。登場するのは普通の人、その名字が佐藤を始め、鈴木・中村・山本・高橋など、ありふれており そこに一般(普遍)性を感じる。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/12/14 15:14

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