光子の裁判 ★ご来場ありがとうございました。 公演情報 青年団若手自主企画 渡辺企画「光子の裁判 ★ご来場ありがとうございました。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    量子力学祭りは、不条理祭り(わかんないことだらけで笑っちゃう)
    不思議な感じ。
    「光子とはなんぞや」ということを、光子を擬人化して裁判スタイルで説こうとした舞台。
    で、観劇後「光子とはなんぞや」と問われれば「よくわからん」と答えるのが、どうやら正しいようだ。

    にしても、「量子力学演劇」というタイトルは、面白すぎる。

    ネタバレBOX

    本編の『光子の裁判』は、約40分程度。
    その後、役者の善積元さんによる、平田オリザ氏作の落語『素粒子の世界』の一席があり、さらにMITからいらした物理学者の方(お名前失念)を交えたPPTがあった。
    ここまでで、1つのパフォーマンスであったとみた。

    『光子の裁判』は、光子(こうし)を波乃光子(なみのみつこ)と擬人化して、彼女が同時に2つの窓を通り抜けたことを、弁護人が証明していくというもの。
    原作のノーベル物理学賞の朝永振一郎さんは、この『光子の裁判』を、ジョージ・ガモフの一連の作品のようにしたかったのかなぁ、と思ったり。

    まず、舞台にあるのが、光子を観測するための実験装置であるのだが、特に詳しい説明はない。というか、詳しく説明されてもわからないというのが本当だろう。

    そして、彼女が同時に2つの窓を通り抜けたことを、順を追って説明していくのだ。これはわかりやすい。と、思ったら、実はわからないものだったのだ。
    それは当然かもしれない。

    量子力学では、数式や理論では説明できるものが、矛盾していたりするそうだ。だから、舞台の上は、不条理臭(笑)が漂ってくる。理路整然として解説していくのだが、わからないことだらけである。「同時に存在」するというのは、「確率的に存在」することだ、と言われて「なるほど」と思ったところで、「ん? 確率的に存在?」となるし、「観測されているときと、観測されていないときでは行動が違う」というのも「観測???」となってくるのだ。難解というのともやや違う。それは不条理的である。
    理路整然としているのに、不条理とは! 
    これが(たぶん)量子力学というものだろう。違うかもしれないけど、そんなイメージがしたのだ。

    わからないことを、わからないままに演出し、演じて、それをわからない観客がわからないまま観る。そして、その内容は、専門家から見てもわからないことであるという、もう、なんかそんなことなんですよ、量子力学。

    素粒子の世界は、数式などでは解説できるらしいのだが、それならば演劇で、ということがこの企みの根本であろう。
    確かに、解説されてはいたのだが、観客側からの葛藤がないのだ。それはわからないから、というだけではなく、「なんで、2つの窓を同時に通り抜けたぐらいで、裁判で裁かれなくてはならないの?」という根本的な疑問が結局回収されないからということもある。
    そういうドラマ抜きでは、観客は納得しづらいのではないだろうか。別に起承転結をよこせ、と言っているわけではない。

    とは言うものの、刺激は受ける。重なり合う台詞と、強弱の感じは好きだ。役者の雰囲気もいい。
    「確率の波は、実在の波ではないのです」と、きっぱりと言い切る台詞には、なぜだか笑ってしまったし(光子の波は確率の波というのには、実際驚いたのだ)。

    で、PPTである。
    観客からの質問が、まさに知りたいことであったりして、「PPTを見て良かった」と思ったのだった。
    そして、最後の最後にされた研究者さんへの質問「同時というのは定義されているのですか?」の答えは「実は定義されていない」というものだった。これには、演出家、役者、そして観客からも「えー!」っと思わず声が出た。つまり、劇中であれだけ「同時」「同時」と言われていたことが、根本から覆ってしまうのだ。
    まさに、どんでん返し。
    これだけで、「ああ、来てよかった」と思ったほど。
    なるほど、これが量子力学(量子物理学)なのかと納得…いやいや納得してないけど、面白かったなあとなったわけだ。
    (ナイスな質問をしてくれた方に感謝!)

    ということは、別の回にも物理学の専門家を交えたトークがあったはずで、全部を見たら、さぞ面白かったのではないだろうかと思ったのだった。

    星は、本編、落語(地口落ちなのだが、一瞬間を置いて笑った。サゲは急ぎすぎたかも)、 PPTまで含めたところであり、「面白かったなあ」という後味が大層を占めているかもしれない。本編のみだったら数は減る。

    そして、また、こんな感じのものは観てみたいと思ったのだった。

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    2010/12/06 06:10

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