あたらしいエクスプロージョン 公演情報 CoRich舞台芸術!プロデュース「あたらしいエクスプロージョン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    鑑賞日2025/12/02 (火) 13:00

    CoRichによる名作リメイク、昨年の「イノセント・ピープル」が密度の濃い舞台だったので期待していたのだが、忖度なしに言えば、期待外れだった。

    まず思ったのはこの料金設定の細かさ。14種類もに分かれている。シアタートップスのような小劇場でこんな細かな料金設定に何の意味があるのか。

    さて「終戦直後の日本、まだカメラもフィルムもままならない時代。邦画史上初のキスシーンを撮ろうと奮闘する映画人たちがいた」というこの物語だが、当時、GHQが「日本人が恋愛、情愛の面でもこそこそすることなく、堂々と自分の欲望や感情を人の前で表明することが、日本人の思想改造に不可欠」との思惑で映画界に強要して初のキスシーンがある「はたちの青春」(佐々木康監督)が制作された。日本を骨抜きにするための3S政策(スクリーン、セックス、スポーツ)が強硬に推し進められていたのだ。その後「また逢う日まで」(今井正監督)でのガラス窓越しのキスが話題になったりもしたが、まだまだキスシーンは邦画の世界では珍しいものだったのだ。若い映画人たちが新たな表現を追い求めるといったことの前に、GHQの強要があったというのが史実だ。

    (以下、ネタバレBOXにて…)

    ネタバレBOX

    「時代考証にそぐわないことは謹んでください」という台詞が2度ほどあるが、そもそも冒頭から時代考証などやっていない。
    出演者がほぼ全員、異なるデザインのアディダス(Adidas)のTシャツを着ているが、同社が(靴屋として)ドイツで創業したのは1949年でこの芝居の時代にはまだ衣類なぞ製造していない。皆が着ている三本線で三角形をかたどったロゴマークにしても一般の製品に使用されるようになったのは1997年からである(因みに日本法人ができたのは1998年で、それまで旺文社が使用していたビルに入居した)。
    スカジャンも横須賀に駐留していた米兵が帰国する際にお土産としてオリエンタルな刺繍をオーダーしたのがはじまりで、闇市時代にはなかったものだ。
    あとジャージのズボンも当時としてはダメだし、当時はスニーカーももっと武骨で、しかも靴底(靴の裏)も単調なものだった。

    男の髪型も襟首部は刈り上げだったはずで、その程度のこともできない役者は舞台に対する心構えが足りない。それにこの作品は「邦画史上初のキスシーン」を撮ろうという映画人の物語なのに、肝心のキスシーンはそれらしく見せているだけ。キスシーンもできない女優を起用すべきじゃない。
    とはいえ、役者陣は一人数役をこなす熱演ではあった。

    ただあまりにコメディ色が強く、「ヒロポン中毒の梅毒女」などという現代ではコンプラにひっかかりそうな台詞で闇市の猥雑感を出し、引揚体験等の胸に迫るエピソードもあったが、ラストの映画人たちの希望がどうにも空振りにしか感じ取れない。

    撮影カメラの代わりにトルソーを使用しているが、チラシ写真に使用しているのだからそれをそのまま使用するか、もしくは似たものを作れなかったのだろうか。そういった面も含めてすべてが絵空事のように感じられてしまった。

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    2025/12/03 17:05

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