あたらしいエクスプロージョン 公演情報 CoRich舞台芸術!プロデュース「あたらしいエクスプロージョン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    「戦禍を経てなお息づく映画愛」

     福原充則が浅草九劇のこけら落とし公演に書き下ろし第62回岸田國士戯曲賞を受賞した作品を堀越涼が演出した。CoRich舞台芸術!プロデュースによる「名作リメイク」第2弾である。

    ネタバレBOX

     アジア・太平洋戦争敗戦後の東京で戦時中国策映画を撮っていた杵山康茂(鈴木裕樹)は、戦禍を生き抜いた助監督の今岡昇太(秋本雄基)とともにGHQの許諾を得ないで新しい映画を撮影しようと目論む。闇市で男娼のアザミ(段隆作)に絡まれているときに見つけた、パンパンのふりをしたカツアゲ犯の野田富美子(浜崎香帆)を主役に抜擢し、使い方がわからないにもかかわらずカメラを所持していた石王(金子侑加)とともに、当局の目をかいくぐりながら撮影を続けていく。同時期に新作に取り組んでいたベテラン剣劇俳優の月島右蔵(猪俣三四郎)は、新しい時代に合った新作劇に取り組んでいた。撮影が進むなかで、杵山をはじめとした面々は皆が負った戦争の傷跡の深さがあらわになっていく。

     出演者が数役を兼ねさまざまな場面が進行していく込み入った作劇を、6名の出演者がじつに自在に、心から楽しそうに演じていた。特に戦争の酷い経験に屈せず力強く生きる石王をはじめ、撮影所のベテラン女優から杵山の戦争協力を裁く裁判長まで自在に演じ分けた金子侑加が圧巻であった。

     いっぱい飾りのちいさな空間にもかかわらず、鏡やキャスター付衣装棚で仕切ることで、じつに広々と感じられた点も収穫である。終盤で石王と杵山の対話のBGMがやや泣かせにかかっているという感もなくはなかったが、照明を含め細部にまで手の込んだスタッフワークも見応えがあった。

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    2025/12/01 16:33

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