カタブイ、2025 公演情報 名取事務所「カタブイ、2025」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    素晴らしい傑作。現在の沖縄を舞台にどんなドラマが展開できるのか予想もつかなかったが納得の脚本。三上智恵監督のドキュメンタリー映画『戦雲(いくさふむ)』にも通じる内容。

    升毅(ますたけし)氏がシリーズを通じる主人公、杉浦孝史75歳を演じる。大学時代の恋人、石嶺恵75歳は佐藤直子さん。娘の石嶺智子は古謝(こじゃ)渚さん。孫の石嶺葵は宮城はるのさん。その恋人の陸上自衛隊員、中村悠太に山下瑛司氏。彼の母親、中村敏江に馬渡亜樹さん。町の名士(?)、池原実に当銘由亮(とうめよしあき)氏。

    自衛隊員と反基地運動の活動家との邂逅。
    『戦雲』でも自衛官と県民との対話がある。県民の根強い不信感に自衛官は答える。「軍が県民を守らなかった前の戦争の過ちを教訓として我々は県民の為に行動します!」

    馬渡亜樹さんは体育会系女子。動きや受け答えがハッキリしている。
    古謝渚さんと宮城はるのさんは何となく顔立ちが似ていて母娘にふさわしい。
    古謝渚さんはどことなく鈴木紗理奈みたいにくっきりした顔立ち。
    宮城はるのさんはある種の天才だろう。全く演技を感じさせず自然に素の感覚を出せる。ちょっと松田聖子っぽくも見えた。

    三線(さんしん)による演奏と琉球舞踊の優雅さ。「ヒヤミカチ節」が始まると、カチャーシー(祝宴の最後に皆で手を振り上げて自由に踊ること)が外にまで出て延々と続く。『焼肉ドラゴン』を彷彿とさせる名シーン。「ヒヤ ヒヤ ヒヤヒヤヒヤ ヒヤミカチウキリ」(「えい」と言って奮い立とう)。ヒヤ=えいやっ!

    ジーマミー(落花生)豆腐=芋餅に近い。
    オスプレイが頭上を通る轟音が凄まじい。これが日常か。
    戦後の人々の再生に歌と踊りがどれだけ力になったことか。ただの現実逃避だけではない。人の心の再生に力を貸す。
    こうなるとカタブイ全3作一挙上演なんかを期待する。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    ラスト、琉装を着て「かせかけ」を舞う宮城はるのさん。恋人に蜻蛉の羽のような薄い着物を作る為、綛(かせ)に巻いた糸をはやまい(筒状の枠)で巻き取っていく。桑野みゆきの『野を駈ける少女 』のラストを思い出した。

    当銘由亮氏のキャラが良い。「綺麗事、綺麗事。何も変わらないし何の意味もない。」
    デモや座り込み、抗議活動に何の未来もなく、地域住民の無駄な対立を煽るだけ。長年の暮らしから全てを馬鹿馬鹿しく感じてしまっている。そんなことよりもっと沖縄の為になることに力を注ぐべきだ、と。こういう本音を言う登場人物がいるお陰で観客は楽になる。

    いや、結果を生む事だけが意味ではない。あの時の気持ちを確認する為の儀式でもいい。戦争で地獄の煮え湯を飲まされた沖縄県民。あの時の気持ちを決して忘れてはならない。どんなに時間が経っても大切なことは何も変わらない。二度とこの地に戦争を持ち込ませないこと。その為に戦う。平和とは戦いのことだ。

    正解なんか何処にもない世界。いつかその日は来るのだろう。その時、悔いるのか?あの時、ああしておけばと。沖縄の問題を考えることは実は日本の未来に直結しているのかも知れない。興味深い観点。「試してみないと分からないじゃない。」

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    2025/11/30 15:13

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  • ご来場ありがとうございました。
    一挙上演、2027年に予定しております。
    ご期待ください。

    ヴォンフルーさんが書いてくださった事、古謝渚さんもSNSで発信しております。ご一読いただけますと幸いです。
    https://x.com/nagisa_koja/status/1995884554226462941

    2025/12/03 12:44

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