公演情報
横浜ボートシアター「新版 小栗判官・照手姫」の観てきた!クチコミとコメント
実演鑑賞
満足度★★★
客層は分からないがガッチリ詰め掛けていた。当日パンフに英訳も付いていたので外人も多いのかも知れない。伝統芸能を観る感覚なのか?前回観た『犬』の時と全く別の劇団のようだ。個人的に『小栗判官』の物語に妙に惹かれるものがあるので決定版的なものを観たかった。室町時代に成立した『説経節 小栗判官』は1423年に亡くなった小栗満重がモデルとされている。文字の読めない大衆に対し「唱導」は音韻抑揚や節を用いて比喩や因縁話を物語に込め仏教の教理を大衆に説いたもの。更にささらや三味線を伴奏に「説経節」として文芸化された。今作は説経『をぐり』をほぼ原文そのままに使っている。社会の底辺の者達に仏教を説いた人間の声。それを聴いていた幾千幾万もの魂。何百年も語り継がれる声。癩病患者が熊野本宮湯の峰にて再生を果たす物語。この説経節が世間に流布して大勢の癩病患者が奇跡を求めて湯の峰温泉を詣でた。1931年(昭和6年)に癩予防法が施行され強制的に隔離されるまで、湯の峰温泉には癩病患者が利用出来る入浴施設があり、癩病患者専用の宿屋もあった。
「えーいーさーらーえーいー」
仮面劇で皆舞台に立つ時は基本、仮面を付ける。仮面も口が出るもの、鼻と口が出るもの、完全に隠れたものと3種類。インドネシアの仮面舞踊劇ワヤン・トペンを思わせる。見たこともない楽器が上手下手に並び、出番のない役者陣は演奏に回る。スティールパン、ハンドパン、シンギングボウル、複数のボウルが重なっているような奴とかとんでもない種類。赤ん坊の泣き声はあかご笛。マニアには堪らない世界。
作曲と小栗役の松本利洋氏、ちょっと三上博史っぽい。ありとあらゆる楽器を奏でる。
ヒロイン照手、柿澤あゆみさん。ドラムもバンバン叩く。スタイルが良い。
桐山日登美さんの姥の仮面とコミカルな動きは客席から笑いが起きた。姥はバリ面(伝統面)だった。
かわらじゅん氏の甲高い声が効果的。
人食い馬の鬼鹿毛(おにかげ)。
「一引き引いたは、千僧供養、二引き引いたは、万僧供養」。
客席通路を縦横無尽に歩く。劇場に風穴を開け、時空を超えて魂を迎え交流す。あの時のあの時代のあの連中と心が通じ合うその刹那。
次回も観に行く。