『イン・ヒューマン (in human)』 公演情報 ARTE Y SOLERA 鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団「『イン・ヒューマン (in human)』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    スタンディングオベーション! 華5つ☆、必見!!

    ネタバレBOX

     今作は、歌舞伎とフラメンコのコラボ。江戸川 乱歩原作「人でなしの恋」をベースに脚本を人形役で出演なさっている歌舞伎の中村 壱太郎さんが担当。全12パートに分かれたシーンで展開する。
     のっけから台座の上に乗った日本人形の態の和の“静”が板センター奥に、フラメンコの“動”が板の他の部分からやや遠巻きに、だが見事に対峙して幕が開く。この瞬間から惹き込まれるのは歌舞伎の静が単に静かに佇んでいる訳ではない“静”だからであろう。
     歌舞伎のハイライトシーンに誰もが知る見得がある。これは型と取ることができる。その時、型になるほどの必然性がこの瞬間に存在している訳だが、その内実は何だろう。有名な「白波五人男(青砥稿花紅彩画)」の浜松屋見世先の場で盗人の弁天小僧が切る啖呵で見得を切るシーンがある。これは悪(犯罪者)と善(浜松屋)とが意地・力という背景に支えられつつ拮抗した結果一見“静”に見える状態にあるという事態だ。(それを見ている者にはこの内実がハッキリ伝わる)更に端的にこの構造が明らかになるのは、同じ演目の二幕目三場、稲瀬川勢揃いの場。この場面では盗賊五人と捕り手(権力・体制の象徴)が対峙する。
     当然のことながらこのファーストシーンに籠められている意味は他にもある。洋の東西である。東は和で、西はスペインで代表されている訳だ。役者の身体の用い方も全く異なる。歌舞伎役者は人形を演じることで動かぬまま同じ姿勢・ポーズで台座の上に固定されているかの如く、恰も物体そのものであるかのように立つ。片やフラメンコダンサーたちは温暖な地中海性気候と透き通るようなスペインの青空に恵まれフラメンコ発祥の地であると言われシェリー酒の名産地としても知られるヘレス・デ・ラ・フロンテーラの陽気、軽やかさ、茶目っ気、情熱を炸裂させる。これらを極めて知的に対比させ演じて魅せることによって観客を虜にしてしまった。筝、ギター、津軽三味線、バイオリン、ビオラ、チェロ、篠笛、ボーカル、カンテ、附け打ち、パーカッションの生演奏・表現も素晴らしい。総ての演者に共通するのが、芸に賭ける真摯な姿勢である。殊にその鍛錬は、驚嘆すべきレベルのものだ。例えば真上にジャンプし落下時は安愚楽を組んで着地する。こんなことを素人が真似したら尾骶骨骨折等耐え難い痛みを伴う怪我を負うであろうことを難なくやってみせる。流石、役者とその底力に驚嘆した。

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    2025/11/13 15:48

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