『眼球綺譚/再生』 公演情報 idenshi195「『眼球綺譚/再生』 」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、『眼球綺譚』望 観劇。
    小説家 綾辻行人の名前は知っていたが、その作品は読んだことがなかった。本作で綾辻ワールドを高橋郁子さんの脚色・演出で一気読みするような感覚。これを<朗読キネマ>というのであろうか。事前(フライヤー)にトリガーアラートの案内があり、さらに前説で 一般的な留意事項以外に「気分が悪くなった方は椅子の前に蹲ってもらえれば、メディカルスタッフが対応する」とあり、一気に緊張感が走る。たしかにホラー・グロテスク・性的な描写があり、そのジャンルの名手である綾辻世界の雰囲気を十分に漂わせていた。この朗読劇を機に、小説(原作)を読んでみようかと思っている。

    朗読劇のため ほぼ素舞台。中央に丸椅子が等間隔に4つと譜面台が1つ、後ろの壁に珠簾屏風のようなもの。その微かに揺れるところへの淡い照明が幻想的であり神秘的で妖しい。演者は女優4人、デザインは違うが黒衣裳で統一。会場内は薄暗く、その雰囲気と相まって 咳(しわぶき)一つなく緊張感に包まれる。役者は 始めから全員登場しているわけではなく、物語の進行に合わせて順次現れる。この公演では音響/音楽効果はなく、オノパトペもない。そこにも物語の世界観を大切にする拘りがある。
    (上演時間1時間35分 休憩なし)

    ネタバレBOX

    朗読劇として表現するには多重構成で複雑な物語.。そして冒頭からして不気味「読んでください。夜中に、一人で」という言葉。それが朗読中 何回も出てくる。

    物語は、出版社に勤め出した20代前半(大学を卒業し半年)の女性 手塚由伊 宅に送られてきた郵便物。便箋に書かれた文は先の文章と宛先、差出人だけ。そして同封されていた小説らしきもの。その内容が 自分の出生の秘密のように思え戦慄を覚える。小説という虚構の中に自分がいる。忘れてしまっていた幼い時の微かな記憶がよみがえる。

    小説の題字は「眼球綺譚」…その構成が、現在と過去を行き来し 幻想、快楽そして猟奇的。小説の語り手である私は「倉橋茂(大学助教授 35歳 男)」、彼が高校生の時の幻想的な追体験をするような物語。そこで 奇妙な女性からの手ほどきで性交を重ねる場面がある。女優だけの朗読劇で、半ば犯されるような情景に違和感をおぼえる。いや情景が立ち上がらないのが惜しい。

    小説の中で 狂った女が産んだ子の名が「由伊」、自分の名が記されている。珍しい名前だから偶然を装えない。忘れていた自分の過去が掘り起こされるような不気味さ。知りたくもない忌まわしい過去があるような。特に狂女 のぐち和美さんの か細く弱々しい囁きが怖くも可愛らしい。由伊が小説を読むという劇中劇、その内容が現在と過去を往還するという多重構成を、朗読劇で鮮明にするのは なかなか難しいようだ。
    次回公演も楽しみにしております。

    0

    2025/11/02 14:52

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大