果実の門 公演情報 乞局「果実の門」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    狂人達の物語
    意外にこういった構図は一般社会そのもののようだと思う。ただ、ここまでは濃く激しくなくとも、似たような薄さで存在する人間関係があるのが今の社会だ。だから、社会を風刺したような舞台とも取れる。それぞれが内に秘めた闇や傷を持ちながら、残りの人生を弱火のまま過ごそうとしている人たちの町に引っ越してきた家族の物語。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    外部からの集合体のような町に元警官の家族がやってくる。夫は警官をクビになったが未だに昔の栄光や威厳を忘れられない男だった。そんな鬱積したものを抱えながらこの町を統制しようとする。その妻と娘は不満ながらも夫と一緒に引っ越してきたのだった。

    しかし、この町の住人らは元警官からみると不審者ばかりだ。そんなことを考える元警官も既に精神疾病者だ。

    町の住人らはこんなだ。
    妻を亡くした男とその男をヒモにして変態プレイを楽しむ尺子。尺子のスナックで働くヌエは美人だが首の骨を折る悪食を持ち、堪らず手から涎を出す癖がある。
    ×4男だがメッポウモテる男、ヒステリーで自分に見合った男を追求する独身女、その独身女の下着の匂いを嗅ぐ男、両親を知らない男、自らの手のひらを切り流血で絵を描くバイト男、弟が亡くなった傷を抱えたままの男、多重人格障害者、これらの中で実は一番大人なホームレスら。

    序盤、ホームレスらが話すエピソードが素敵だ。また個々の事情をホームレスが説明する場面での演出がお見事でとにかく解りやすい。ホームセンターでの店長と店員の会話はコメディかと勘違いするほど不条理満点でむしろ愉快だった。

    抱えた傷の程度はそれぞれだが、元来、人間はどこかしら欠けているのだから、既に狂人なのだけれど、それを理性と言うベールで隠しているだけに過ぎない。だとしたら舞台の上も下も大差ないな、とも思う。

    物語は完結しないでストン!と途中で幕が下がってしまった感はある。だけれどこれらの狂人達に「ああ、そうかい。」なんつってこちらが理性的ベールをまとって同情する価値はある。

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    2010/11/19 17:18

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