ロンリー・アイランド 公演情報 ティーファクトリー「ロンリー・アイランド」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    電車遅延で冒頭を逃し、約10分経過した時点から観劇。冒頭に伏線が凝縮しているのかそうでないのか判別つかず。「戦争」の時代である近未来の風景が、斜に構えた目線の中に真顔がよぎるような調味の塩梅で描かれている。加藤虎之介(空気が似てるなァとは思ったが風貌からは本人との認識に至らず)が担った役が戯曲のその目線を体現しており、舞台をある意味で織り上げていたとも言える。
    21世紀は人類から戦争を召し上げられぬ事を我々に知らしめたばかり。80年間自国だけの平和を享受した日本が、「戦争抑止の装置を手にしてはいなかった」事実も早晩目の当たりにしそうである。
    今の世相、「戦争」の概念が記号として、「感情」を遠因とする主張や感情表出に用いられている中、戦争に接する事を余儀なくされる時代の手触りを伝える舞台。

    ネタバレBOX

    冒頭を見逃したので会場で売っていた戯曲本を買ったが、台本は自分が見た箇所から始まっている。開演は定刻通りだと聞いたから、戯曲に更に何かが付け加えられたのだろう。
    そこを知りたいが、戯曲には書いてなかった。
    テキストを手に取り、テンポ感ある場面展開(一場面は短い)を記憶をなぞりながら読み進めた。ぐっと来た。ここ最近の川村氏の新作の中では明快で台詞が効いている。虎之介演じたヒロという人物は「ディアハンター」や多くのベトナム戦争(の時代性を色濃く反映した)映画に登場する精神の半分イカれた人間になって行くが、戦争後遺症を含めて戦争が人間精神にもたらす影響を、数名の人物類型それぞれに対して描き込んでいる。

    後遺症と言えば、日本で唯一これを取り上げたと言って良い精神科医による「戦争と罪責」が、地上の戦いで「殺し」を行なった元軍人のその後(多くが精神を病んでいた)について記したものだろう。取り上げられている大半は中国戦線での経験。東南アジアを日本軍は破竹の勢いで進撃し、途中虐殺もやったようだが「占領者」として短期間君臨したのであり、その後の太平洋戦争では殆どが米軍との海か空での戦闘。ガダルカナルは地上戦があったが敗走か玉砕か餓死である。
    従って真珠湾攻撃以前、以後通じて「殺し」とその心的外傷の大部分の原因となったのは中国戦線での経験であった。
    「殺る」側と、それを目の当たりにした側の中に、深く大きな傷が残された事を想像する。この想像力を人間の武器として、ステロタイプなイメージと記号による「戦争」の闊歩をとどめたい。
    「あとは戦争しかない」狂気を正当化する美談ちっくなドラマより、真っ当な感覚を取り戻すような戦争ばなしが、観たい。自分を冷静に保つために。

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    2025/10/24 00:40

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