223番のはなし 東京公演 公演情報 劇団芝居屋かいとうらんま「223番のはなし 東京公演」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い。或る小説をモチーフにしていると思うが、原作のファンタジーに比べ この作品はシニカル・ファンタジーといった違いがある。物語には 現代社会(文明)への痛烈な皮肉と批判が込められている。勿論、本作のタイトルもその小説を連想させる。

    説明にある「男が迷い込んだ場所は 何世代も前の生活をしていた 現代人が文明の豊かさと引き換えに失ったモノを彼らは持っていた」…その場所とは、失ったモノとは等、さまざまな問いと男の思いが交差する。その世界観が舞台美術によって惑わされそうだ。例えば現界か異界、または 現世か来世など、異なる世界を描くことによって、今を客観的に表出する。

    少しネタバレするが、男が傍白する「見えないものが見える 不思議を信じる」そして「目を開いているのに 見ないふりをする」は、文明という便利さ豊かさの中に忘れてしまったものであり、諸々の不(不健全・不寛容など)や無(無感動・無関心など)を表しているよう。舞台という虚構に リアルな社会の歪を落とし込み 考えさせる好公演。
    (上演時間1時間30分 休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、周りが青葉で繁った空間、そして側面が白と黒の箱馬がいくつか。冒頭 箱馬に何本かのポールを立て牢屋を表す。調査官が牢内にいる男 山岸に向かって、これからは223番と呼ぶ と。調査官の取り調べが、男の回想となって物語が始まる。

    男は山奥の不思議な村へ迷い込んだ。後々 明らかになるが、会社ひいては社会に対して嫌気がさし 自殺しようとしていた。一方、村は自給自足で物質的に裕福ではないが、精神的には安らいでいる。村人は喜びや悲しみの感情が共有できるといった特性がある。コロナ禍を経て無関心・不寛容といった今の風潮への皮肉のような。村人が大切にしているのは「水」と「家族」。その大切な水が 最近汚染されている。村の上流に 男がいた街(世俗)の会社が、ソーラーパネルを設置したことが原因。森林を伐採し水質汚染、まさに環境破壊である。2年前に街の人間 是枝が来ており、彼の会社が設置したもの。是枝も村が気に入り その地の娘と結婚しようとするが…。

    芥川龍之介の小説「河童」をモチーフにしているよう。村人は皆 和装で頭に円い髪飾りと水筒を持っている。説明にある「現代人が文明の豊かさと引き換えに失ったモノ」、その心の豊かさを面白可笑しく描破している。男223番は騒乱罪(ソーラーの駄洒落か?)で捕まったらしい。村人が街へ行き、要人の尻子玉(しりこだま)を抜いたことに関わっている と。

    物語は、上演前から少しずつ始まっている。村人が独特の衣裳で現れ、箱馬を動かし不思議な世界観を構築していく。箱の側面が白と黒だから見(組み合わせ)方によって鯨幕=死後に見える。そもそも男 山岸が自殺しようとして迷い込んだ村は、既に黄泉の国だったのでは と思ってしまう。想像が膨らむ公演だ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/10/11 16:47

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