ジャンク・チャック・ハック 公演情報 劇団身体ゲンゴロウ「ジャンク・チャック・ハック」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    有名な2つの物語(世界)が重層的に繋がり、独特な世界観を築き上げている。それは十代後半から二十代前半にかけての若者の夢や希望 そして不安が入り混じった表現し難い感情を巧みに描いたシリアスファンタジー。

    現実と夢想、不安と滑稽の境界を飛び越えながら、誰もが抱く孤独とその先の希望を浮き彫りにしていく。熱っぽくリアルで残酷なこの物語は、<その年齢 特有>のものかもしれない。観客が立ち会うのは、その若者たちの自立の瞬間だ。しかし そこから先は未知の世界が待っている。悩み傷つくかもしれないが、二度と戻らない時代を仲間と過ごしたことも事実。それが これから生きていく糧になる。

    俳優陣は、まだ何者にもなれていない等身大の若者像をしっかり立ち上げる。前作「最初の二十面相」で、「怪人二十面相(江戸川乱歩)」+「小さな王国(谷崎潤一郎)」を翻訳した路線であろうか。
    少し気になるのは 構成が技巧的で複雑といった印象、それが見巧者向けと受け取られたら勿体ない。
    (上演時間2時間 休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、後ろの壁に月or太陽と雲の形をしたオブジェ。上手/下手に鉄骨筋交い のような造作。台と幾つかの枠椅子があるだけのシンプルなもの。舞台全体を動き回り若さと躍動感を表すために広いスペースを確保している。

    舞台は 静岡県の高校。文化祭で演劇をやることに、その演目が「銀河鉄道の夜」。メンバーは、やる気のない男タカダとフトシ、生意気な演出家 スガ子、疎外感を抱える元サッカー部員のメカメ、そして友達のいない鉄雄。そしてアイドルのユメ子が…。しかしトラブルがあり演目を「ピーターパン」へ、しかも結末も変える。その2つの物語が交錯し混沌とした世界観へ誘う。どちらも夢想のようで現実感のない話で、現実逃避もしくはモラトリアムといった姿が垣間見えてくる。

    「ピーターパン」の結末を「ネバーランドで永遠に暮らす」へ変更するが…。高校を卒業して5年、ユメ子は病院で昏睡状態のまま。それぞれの現実の夢(演劇人・起業家・医師・車掌など)が叶いそうになると、ユメ子のことは忘れて自分の現実を追うが…。夢という居心地の良い時間/空間、しかし その世界は止まったまま動かない。劇中でも「切符」のシーンがあるが、現実で生きていくために必要なキップが、伏線として鏤められている。その過程(回収)が若者の自立していく姿として描破する。ラストは銀河鉄道に準えた汽車が南十字星を目指して走り出す。

    情景に応じて照明は、多彩な色を用い美しくファンタジー、ずっと流れる音楽は心地好い。この舞台技術も夢の中といった浮遊感を漂わせ巧い。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/10/11 10:57

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