The Blue Dragon - ブルードラゴン 公演情報 東京芸術劇場「The Blue Dragon - ブルードラゴン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    舞台上で表現される「画」は素晴らしい
    テクニカルな意味において、計算された「画」作りと、シーンのつなぎ、セットの使い方、どれをとっても素晴らしいものであった。

    ネタバレBOX

    現代とノスタルジックな意味においてのシノワ風味が、全編に散りばめられており、それがいい色を舞台に添えていた(直接的にも比喩的にも)。

    具体的には「書」(劇中では「書道」と訳されていたが「書」では?)や「刺青」といったものであり、それは欧米人にとっては刺激的で興味をそそるものであっただろう。
    そして、それらの使い方が効果的であり、文学的でさえあった。

    特に冒頭で行われる「書」の説明にあった、「一」の意味さらに「木」の書き方は、物語に意味を持たせていた。
    舞台は大きく上下に分かれ、天地を分かつ「一」が大きく表現され、それを常に意識させていたと言っていいだろう。
    さらに、妊娠検査薬で現れる「+」という文字の2画目の縦棒は、「木」を書く際の縦線であり、「根を張る」ことである。
    妊娠したことにより、中国に残ることを意味づけられ、誰かと誰かが結びついたり、そこに定着することを表している。
    そして、「木」は2つで「林」になり、3つで「森」になる。それには4つはないのだ。つまり、ラストで描かれる3つのパターンには、「4」は存在しないことを暗示していたのだ。

    「刺青」の「痛み」の伴う「美」というものも、物語を大きく支配していた。
    主人公の男性が、それを好んで受け入れている様がすべてを物語っていたと思うのだ。

    物語はほんのささいなストーリーだ。
    それを台詞等で、観客に機微のようなものを感じてもらいたかったのではないかと思うのだが、単に言葉の問題だけでなく、もうひとつ響いてこなかったのだ。
    それは、私が舞台となっている中国と同じアジアに暮らす住民だからだろうか。ちよっとそんな気もした。

    全編、映像の使い方が素晴らしい。また、すべてを「見せる」ことで説明的な舞台演出となっている。例えば、空港ならば、雑踏や行き先掲示板、そして、列車に乗り込めばその走る様子などのセットが用意されているのだ。さらにシーンのつなぎ方が、映画等の映像作品と同様な「カットつなぎ」のように見えていた。

    そのように「映像的」すぎる演出で、さて、これは本当に舞台にする意味があったのか、と思う場面もあった。
    しかし、途中に入ってくる、ダンスが素晴らしいのだ。これが「舞台」であることの意味であったのだと少しだけ納得した。
    とにかくキレも振りも素晴らしいのだ。

    きちんとしたパッケージ作品であり、確かに「キレイ」ではあるのだが、「人」の「営み」というか、「存在」のようなものが、つるつるした手触りのためか、あまり感じられなかったのが残念ではある。

    そして、ラストだが、可能性と最適を見せていたようだが、残念ながら私はまったく楽しめなかった。

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    2010/11/13 07:32

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