脈〜MYAKU〜 公演情報 劇団フィータル「脈〜MYAKU〜」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    奇妙な葬式から開幕。アングラ仏教の式典。母親が事故死して独り取り残された中学生の息子(浦嶋建太氏)。親族は誰も手を差し伸べない。独り施設送り。

    時は経ち、新人新聞記者になった主人公。小さな町、海まち市の地方新聞社・海洋新聞。同棲している恋人(小峰千采〈ちうね〉さん)は大学院生でネットで書いた詩が評判を呼んで出版された。彼女を見付けた出版社の渡邉理衣さん。中学の廃部寸前の演劇部では空木彩(うつぎさい)さんがその詩を演劇化して演出、部員は栗原菜瑠さん、片瀬尋さん、香取八重子さん。臨時顧問代理として滝本美成(みな)さん。
    主人公の取材先の菊農家と花屋の夫婦(梅﨑信一氏、小川友子さん)。

    時折、挿し込まれる奇妙なコンテンポラリーダンスや擬音の行進が印象的。呼吸。奇妙なセンス。テイストがホラーなんだよな。無機質な集団の群舞が作家の武器だと思う。

    前説の(ジェシカ)さんが秀逸。忘れないようにボールペンで両腕にメモを書き込んでおり、更には脚にまで。

    ネタバレBOX

    (ジェシカ)さんの描く世界は病んでいる。トラウマによるPTSDに悩まされどうしてもそこを断ち切れない。「あの時のあの人の悪意が今も自分の身体に脈づいている」。その感触が身体中の血管を巡り侵食し汚していく。だが悪い記憶が自分を苦しめるのならば、同様に良い記憶が自分を救けてくれる筈。演劇部の顧問教師に性暴力を振るわれた中3の少女はもっと楽しいこと優しいこと元気になれることに自身を向ける。若き新聞記者は社の意向で、ある候補の当選に貢献。当選した新市長は劇場を建設する為に縁ある菊農家のビニールハウスを埋め立てる。絶望して亡くなった菊農家の老主人。記者は仏壇に焼香を上げに来て、遺された妻に謝罪する。「何にも出来なかった。一体自分のやってることに何の意味があるのか?」妻は以前彼が書いた記事が家に飾られている様子を見せる。「人を喜ばせることだって出来るのよ。」人の為にだってなれる。実はこの世の全ての力は相反する方向性を併せ持つ。人に光を射すことに半分、闇に突き落とすことにも同じく半分。その加害性に絶望もするが人を苦しめるばかりではない、もう半分で人を救えもする。

    物語のキーとして、恋人の詩が重要なのだが使わないのは勿体ない。主人公の記者を詠んだ詩に感銘を受けて、中学校の演劇部で公演。その舞台を観てかつての自分自身に励まされる記者。亡くなった母親の記憶が絡むべきだろう。

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    2025/10/03 22:11

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