Jeanne d’Arc -ジャンヌ・ダルク- 公演情報 劇団ミュ「Jeanne d’Arc -ジャンヌ・ダルク-」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い、お薦め。初回ー満席どころか増席。
    チラシにある「壮大な歴史スペクタクル・ミュージカル!」という謳い文句であるが、脚本・演出・演技(歌唱も含む) どれもレベルが高く観(魅)せる 力 がある。ミュージカルであるが、ヘッドセットマイク等は使わず 生の歌で聴かせる。地下であまり広くない劇場だから、十分聞こえる。声量をコントロールし安定した音程とリズム。舞台上でピアノとパーカッションの劇伴(奏者は黒衣裳)。「日本発のミュージカルを、世界へ!」を標榜しているだけのことはある。またフィジカル・シアターといった印象もある。

    物語は、ジャンヌ・ダルクの異端裁判のやり直しを通して、彼女の生き様とシャルル七世の苦悩をダイナミックに展開していく。ジャンヌ・ダルクがどのようにして歴史の表舞台に現れ 去ったのかを回想するスタイルで紡ぐ。舞台は意識的に原色(衣裳や照明等)で彩っているようで、スタイリッシュといった印象。この裁判が異国の それも約600年前の出来事であるが、なぜか現代日本における司法の在り方(冤罪等)を連想させる。観応え十分。

    なお ダブルキャストであるが、それぞれ12回公演があることから 声を大切にしてほしい。
    (上演時間1時間40分 休憩なし)【ランス】

    ネタバレBOX

    舞台美術は中央奥に両引扉、その戸に横長の覗き窓。戸を少し開け後部から照明を照射すると十字架になる仕掛け。下手は演奏スペース。立方体・直方体 まるで積木のような箱が置かれ、上手にサークル状の柵。箱は 場景に応じて動かし光景や状況を表す。サークル内は裁判の証言席。上演前は宗教音楽が流れている。

    物語は、異端裁判のやり直しの中で ジャンヌ・ダルクの生き様を生き活きと紡ぎ、史実に重ねる。フランスとイングランドとの間で100年戦争中。ジャンヌは 神のお告げを機に王太子に謁見し、シャルルは ジャンヌを指揮官に抜擢し「オルレアン包囲戦」で勝利する。彼女は 矢で負傷しても立ち上がり、劇中でも使った「百合の花」をモチーフとしたジャンヌ軍の旗を翻し戦う。勝利後、王戴冠の場所ランスを奪還し シャルル王太子は フランス王に即位。しかし 王からの軍事支援も次第に減り、ジャンヌはイングランド側に囚われ悲運の最期ー火あぶりの刑。この知られたジャンヌの生涯をコンパクトに時系列的に展開していく。

    異端裁判を行う必要性と当時の社会状況も説明する。民衆から支持を受けるジャンヌを貶める必要があった。そのため 神のお告げを聞いた虚偽ー異端者、女性の身分で男装した規律違反者(フランスでは性別、階級によって服装が厳しく律されていた)という理由をつけ 火あぶりの刑に処す。この場面を描くことによって、裁判のやり直しの意義が浮き彫りになる。さらにシャルル七世は、自分が先王の実の子ではない と母に示唆されたことから、自分が王位を継承してよいのか苦悩していた。史実に人間性を巧みに織り込み、物語性を豊かにしている。

    生の歌とダンスといった違う要素を巧みに取り入れ、物語に華を添えている。と いうか色々な演劇の魅力(心に響く表現力)を盛り込んで物語を成し、同時に楽しませるといったサービス精神。史実に人間性を織り込み、しかも分り易く展開することで 物語としての記憶と演出の印象が心に残る。
    衣裳はデザイン違いの 白の衣裳と黒の衣裳、それにシャルル七世の母 イザボーのキャミソールのような真紅の薄着。淫乱王妃を演じるための色衣裳。基本は この3色で舞台を彩る。そして照明の光彩は、青金・白金・茜色などを照射し人物を際立たせる。細かく丁寧な演出が物語を分かり易くしている。勿論 演奏も効果的で公演を支えている。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/10/02 17:01

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