砂漠のノーマ・ジーン 公演情報 名取事務所「砂漠のノーマ・ジーン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/10/01 (水) 14:00

    オーストラリアで、消滅したと思われていた言語を話す女性が発見され、言語学者が採集を試みる。
    そんな言語をどう表現するのか、興味津々で劇場へ向かったが「その手があったか!」
    という驚きの手法。
    侵略者に奪われたのは言葉だけではない、民族の存在そのものであった。
    その罪を一体誰に問うべきか?
    出演者の努力と、この戯曲・演出の素晴らしさを忘れることはないと思う。

    ネタバレBOX

    頑なに言葉を発することを拒んでいたミラが、言語学者の問いにぽつぽつと答え始める。
    ミラは片言ながら英語を解し、言語学者との会話はすべて英語、その日本語訳はスクリーンに
    映し出される。
    そして消滅していたと思われていたユーリア語は日本語で話される。
    この言語表現の設定に慣れるまで少し時間を要した。

    言語学者の大声の英語が、”よくあるアメリカ映画のテンション高く隙間を埋めるあまり重要でない台詞”のように聞こえたのが要因のひとつ。(努力の賜物と理解している)
    だがネイティブに近づけるための彼の発音、リズム、感嘆詞などに少し慣れてくると、
    ”ネイティブが発する生身の言語”と”あとから獲得した言語”、そして”話さなくなって久しい言語”の
    違いが際立ってくる。

    圧巻はやはり森尾舞さんの「ミラ+3役」だろう。
    亡くなった祖母、母、叔母と交信するかのように過去を語り、ともに旅をするミラ。
    祖母とミラ、母とミラ、叔母とミラ…。二人による会話を(まるで落語のように)自然に切り替えながら紡いでいく。
    この交信の際のユーリア語は流れるように語られる。
    大切なことはすべてユーリア語で学んだのだと解る。
    そして侵略者たちが何をしたか、なぜミラの歯ぐきから出血が止まらないのか、私たちはそれを知ることになる。

    重いテーマのラストがほの明るいものであったことに救われる。
    ミラはユーリア語の最後の話者ではなかった、そしてこの作品は語り継がれていくのだという確信の故である。
    西尾友樹さん、森尾舞さん、作・演出、そして素朴で美しい美術等すべてに感謝します。

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    2025/10/02 13:53

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  • お客様にも集中力を要する作品ですが、丁寧に読み解いていただき感謝いたします。
    客席からの視線は出演者の熱量の支えだと、痛感しております。

    ご来場ありがとうございました!

    2025/10/02 14:50

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