勿忘草 公演情報 シレネ「勿忘草」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、典型的なノンバーバル劇。
    物語は、ダンス(ソロやアンサンブル)や音楽で綴った女性の生き様。その結末は観客によって捉え方が違うだろう。内容は、説明にあるように 誰とも深く関わらず、淡々と過ごすOL・恵。彼女に、定期的に届けられる『一輪の花』。暴力に支配された家庭、孤独な施設での生活、繰り返される心の傷を描いたもの。一輪の花は、容易に分かると思うが 勿忘草(ワスレナグサ)のこと。その花言葉は「私を忘れないで」、これが実に意味深なため 結末が…。

    言葉はないが、ダンスと音楽で情況と情景を巧みに描き出す。そしてダンス以外の丁寧なしぐさで心情を描き、最小限の小物で状況を表す。例えば、傷ついた もしくは苛ついた心を癒すための癖ーささくれ・さかむけ を毟る。その原因はストレスや栄養失調らしいが、そうなったのは毒母の虐待。いわゆるネグレストである。それからは施設、学校そして職場での無視や苛めといった負の連鎖。そんな情景をダンスパフォーマンスで表す。

    そして音響/音楽や照明といった舞台技術が物語を効果的に支えている。音楽はその状況に適した選曲、例えば 自分を奮い立たせる場面では、中島みゆき の「ファイト!」が流れる。照明は抒情的とも思えるような色彩ー青白色や白銀色ーを使ったスポットライトが心情を際立たせるような効果と印象を放つ。
    (上演時間1時間20分) 

    ネタバレBOX

    素舞台、後ろは暗幕。情景に応じてテーブルや椅子、そしてパソコン、タバコ、カッター等の小物。

    冒頭、上手から 横一列でゆっくり特徴ある足取りで登場。ラストも同じような足取りで歩む。力強いとは言えないが、確かな歩み(生)が感じられる。登場人物は6人---主人公の恵、その姉 樹美、2人の母、そして恵の同級生や同僚といった時代や状況に応じたアンサンブル3人。家族の3人は色彩ある衣裳、アンサンブルの3人はデザインが違うが皆 白地の衣裳。3人が暗幕の前に等間隔で並ぶと鯨幕(死)を連想する。ラスト、恵はどうなったのか、その結論は観客に委ねられたよう。

    ダンスパフォーマンスという身体表現がメインであるが、例えば毒母(横関友希サン)から逃れるように家を出た姉(ちょいな サン)、いつも助けてもらっていた妹(塚本芽衣サン)の悲嘆。姉が出ていく後ろ姿を見た塚本さんの表情がすごい。このシーンでグッときた。ダンスも椅子に座りパソコンやボトルを使った表現力も巧い。その魅せるを意識した演出が印象的だ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/09/28 17:53

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