Letter2025 公演情報 FREE(S)「Letter2025」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い。
    戦後80年 多くの反戦劇が上演されているが、この公演もその1つ。FREE(S)では節目に関わらず毎年設定を少しずつ変え、上演を続けている。そこに反戦・平和への強い思いが表れている。設定は異なるが、それは現代の場面であり、戦時中の芯となる場面は変えない。「Letter2025」では、説明にあるように「2011年から1945年にタイムスリップ」という始まりの年が、戦時中の或る重要な台詞に重なる。過去と現代は地続き、その思いの繋ぎが肝。

    物語は 現代の設定が巧いことから、分り易く感情移入しやすい。少しネタバレするが、主人公の青年と手紙を受け取る少女は茨城県内の高校生(17歳)。2011年3月11日に起こった大きな揺れによる災害がタイムスリップした原因。勿論、東日本大震災のことである。戦争は天災ではなく、人間の過ちであり最悪の不条理。現代と戦時中の意識や暮らしを対比しながら紡いだヒューマンドラマでもある。見応え十分。
    (上演時間2時間30分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、段差を設え上段の中央に出捌け口 その両脇に石柱。 上手側に衝立を並べた壁。そこをスクリーン代わりに映像を映す。情景に応じて和室へ変化。衣裳(軍服や地味な和装)や小物(ガラケイ等)もその時代を表す丁寧さ。
    音楽も主題歌「大切な君へ」が実にイイ。

    2011年3月11日、地震の衝撃によって1945年3月11日 東京大空襲の翌日へ タイムスリップしてしまう。ラストは1945年から2025年へ、戦没者遺品として届いた一通の手紙、そこには ある人に宛てた切ない想い☺が書かれていた。 現代から太平洋戦争終戦間近にタイムスリップした青年(佑太サン)の戸惑い、その時代を懸命に生きようとした同年代の特攻隊員の姿を描いた群像劇。震災から14年、手紙を受け取った女性(市瀬瑠夏サン)は夢を叶え、国境なき医師団へ。祖父が生き残ってくれたおかげで医師になる。そして紛争や災害等で傷ついた人たちの医療行為、そこに命をつなぐ というテーマが浮き彫りになる。

    国(大切な人)のため 夫々が思う心情を丁寧に紡ぐ。例えば 特攻隊員や予備隊員(本作では女性)たちは、妻や許嫁への情愛を語り、ハーフの隊員は世間から差別され蔑まれながらも、日本国民として特攻を志願。そして残していく妹を愛おしく思う気持など。タイムスリップしてきた青年は、当初奇異に思われていたが、段々と特攻隊員たちと打ち解け 友情を育んでいく。
    特攻を志願した隊員が覚悟を決める場面は、表面上は家族や恋人、仲間を心配させまいと平静を装ったり、冗談を言って場を和ませている。しかし、心中は不安や恐怖がつきまとっていたと思う。一番人間らしい感情であり、それをどのように表現し伝えるかが難しい。公演では司令官と特攻隊長の兄弟の会話で、当時の精神論を語っている。司令官ゆえ 出撃しない兄(近藤哲也サン)は、父の遺した「命を惜しむな」という言葉に囚われている。一方、出撃する弟(下出丞一サン)は「命を紡(繋)ぐ」ものと思っている。父の教えを別った場面を描くことによって幅と奥深さを表わす。この弟の台詞が肝。

    ラスト、結局 青年は特攻隊員たちを助けることが出来ない、それどころか自分も戦闘機に同乗し敵艦に突っ込む。それがおじいちゃんになる人を救う方法でもあると。タイムスリップした当初、特攻隊員に向かって 命を粗末にするなと言っていたことと矛盾。帰還するところを確認するためか。また 脱走を図り殺された隊員から、信念は曲げるなと激励されていたにも関わらず変節してしまう。現代にも通じる同調圧力のような抗いきれない描き方であるが、やはり特攻という行為には納得も共感も出来ない。特攻は美化できないが、風化させてはならない。

    卑小なことだが、茨城から東京へタイムスリップ。ラストの映像に百里神社が映るが、そこは茨城県内で近くに特攻訓練所があった。その場所の不整合に違和感を覚えた。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/09/27 09:21

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