「タクボク~雲は旅のミチヅレ~」 公演情報 江戸糸あやつり人形 結城座「「タクボク~雲は旅のミチヅレ~」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    初の結城座公演。寛永十二(1635)年旗揚げで、今年390年という長い歴史を持つ劇団。国と東京都の無形文化財でもある。公演は、石川啄木の小説「雲は天才である」をオマージュしたオリジナル作品。

    個人的に見所は、物語・操演・演奏の3つで、それぞれが巧く絡み合って面白い味わいを出していた。特にメインの あやつり人形は、繊細で表情豊かな表現をしている。
    (上演時間1時間15分)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、中央に大きな平板 それが八百屋舞台のように傾いている。物語の展開に応じて 平板を動かし 衝立やスクリーン(影絵)として活用。その周りを教室にある木の机と椅子。それらもひっくり反っている。生演奏は紫竹芳之さん、多くの和楽器を場面に応じて演奏し分ける。

    糸あやつり人形の一座(=結城座)が旅公演をしている。そして都会の中の袋小路に迷い込み、踵を返そうとしたが行き止まり、そこに大きな穴が空いていた。ゆっくりと穴を降りてみる。そこ(底)は廃校になった教室のよう。その雰囲気はザムザ阿佐谷にピッタリ。そしてタイトルにも原作(小説)にもある「雲」は、旅する劇団を象徴しているよう。中央の平板の上に一冊のノート。イシカワ ハジメ(石川啄木の本名)の日記らしい。石川啄木は20歳の頃、代用教員をしたことがあった。そして何故か平板の上に青空がある。彼の日記とすれば、その心情と当時の時代閉塞を描いているよう。

    ハジメ先生(結城孫三郎サン)は、児童達(安藤光サン)に自作の歌を歌わせた。それを非難・叱責するウナギ校長(小貫泰明サン)、その妻 バレイショ夫人(大浦恵実サン)、ススケランプ教頭(結城育子サン)。擁護するマドンナ先生(湯本アキ サン)。歌は児童達が自然に親しみ、想像力を養うため。一方 その自由さを嫌う校長やその妻、教頭らは怒る。また ハジメ先生は、児童達を連れて森(課外授業)へ行ったが、これも校長達は怒り後を追った。
    一方、劇団員がバッグに入れた「八百屋お七の人形」がなくなっている。団員達は人形探しを探偵 独眼竜(両川船遊サン)に依頼。そして森の中へ。森は特別な香を発し、この匂いを嗅ぐと眠り込んでしまう。団員達は森から脱出し、ハジメ先生や児童達も森から抜け出したが、追ってきた校長達は眠り込んでしまい…。

    「雲」は、「自然」「自由」「発想」も表し、ハジメ先生そのもの。一方、<学校>校長や教頭は旧態依然とした体制で、物語はその対立構図そのもの。啄木と重なるハジメ先生、ラディカルな民主主義と人間味溢れる姿、それを受け止める児童達の自由さが伝わる。しかも それを<江戸糸あやつり人形>で、結城座独自の構造を持つ操作盤「手板」で操演する。人形を動かしながら台詞も言う。

    ちなみに、「八百屋お七の人形」が無くなったことに関連付け、その操演の素晴らしさを 浄瑠璃「伊達娘恋緋鹿子」の「火の見櫓の段」を操って観(魅)せた。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/09/23 17:46

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