『天守物語 〜夢の浮橋〜』 公演情報 虹色ぱんだ「『天守物語 〜夢の浮橋〜』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。
    泉鏡花の独自の耽美的で幻想的な作風をしっかり舞台化している。物語はタイトルにある天守--白鷺城が舞台になる。その非日常空間をどのようにして表すのか、そして 登場する異界ものが どのような物語を紡ぐのか。原作を読んでいなくても分かり易い描き方、そこに時代絵巻AsHで培った灰衣堂愛彩(本公演では役者名義・羽衣堂愛彩)さんの手腕をみる。会場に入ったとたん異空間ー妖艶な世界へ誘われる。
    (上演時間1時間40分)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、白鷺城の最上層(五層)ー窓がない薄暗い部屋を現わしている。上手と下手を分け、その間に溝のような凹み空間と板の橋。上手は和室で襖や障子が所々傷んでいる。その部屋の神棚に大きな獅子頭。下手は中庭(天守に対して下界)のような場所で後ろに衝立状の塀。先の溝の後方には色鮮やかな楓。上演前は童の遊ぶ姿、虫の鳴き声が微かに聞こえる。実に抒情的な雰囲気を漂わせてる。

    舞台は播州姫路、白鷺城の五層階。ここには人ならざる富姫が主として住まい、藩主であろうとも近づく事の出来ない魔の住処。腰元(妖)が露を餌に秋の花を釣り上げ、童が歌って遊ぶ。妹分の亀姫が猪苗代城(別名:亀ヶ城)から遊びにやってくる。富姫は、帰りの手土産に 藩主が鷹狩りに使う白鷹を攫って与える。若き鷹匠 姫川図書之助が主君の命で白鷹の行方を捜しにやってきた。そして妖(アヤカシ) 富姫と人(ヒト) 図書之助が、はからずも恋に落ちる。しかし…。
    図書之助の人間界への未練と富姫への執着、その葛藤する姿 それこそが情理。そして 妖と人が共存する不思議な世界観が広がる。

    見所は、本筋に妖怪と人間の切ない恋物語。脇筋に封建社会における絶対服従の不条理。公演ではこの両方を巧みに描き、人間性と社会性を重層的に紡いでいく。本筋(人間性)は先に記した通りだが、脇筋(社会or時代性)は、富姫が 主君の理不尽な命で切腹した武士の元妻。そして亀姫も描かれてはいないが妖であることから、同じような身の上ではなかろうか。そこに妖と人の悲恋の元凶となった 理不尽な世が立ち上がる。理不尽といえば、図書之助を追ってきた同輩によって天守の象徴である獅子頭の目が潰され、富姫、図書之助を始め腰元妖も皆 目が見えなくなる。公演では、追っ手と獅子との戦いを舞台狭しと動き回る(祭りの獅子舞のよう)。

    衣裳は和装、メイクは妖しの顔といった感じで 物語の世界観を損なわない。音響・音楽は三味線など和楽器が情景を引き立てる。なにより照明が色彩豊かで、柔らかく和むような照射。舞台美術・技術・小道具(刀 等)そしてメイクといった総合的な効果によって成り立つ幻想劇。
    卑小だが…最前列という至近距離で観劇させてもらったが、手(裸)足の濃いマニキュア、ペデュキアが照明に反射するところがあり 気になった。敢えてベースコートだけにしなかったのだろうか。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/09/21 12:25

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