今がいつかになる前に 公演情報 空間ゼリー「今がいつかになる前に」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    もっとコメディ的な舞台なのかと
    誤解していた。だって出演がハロプロでしょ?そうしたら、すんごく嬉しい誤解だったことが判明!
    10月30日、私立女子小学校6年生のクラスで起こったことを描写した作品だったが実に真摯な内容だった。終盤は泣けた。何度もハンカチを目に当てて泣いた。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    物語は今井先生を軸に構成。今井先生は窓から教え子らがうさぎを二階から紐で吊るしているのを発見する。うさぎは無事だったが、先生は命についてコンコンと生徒に教え諭すが当の生徒らは反省もなければ罪悪感もない。遊びの一環なのだ。

    この事件をきっかけに今井先生は「子供が可愛いと思えたのは最初の一か月だけだった。」と主任教師に告白し悩む。退職も視野に入れているようなそぶりだ。一方で悩む今井をしり目に中里教頭は生徒の保護者の方に関心がいく。「あまり大げさに生徒を怒るな。今井先生は厳しすぎる。」というのだ。

    これらの事も含めて教師らは放課後に会議を催すがこの会議の情景はまるで小学生そのものだった。笑)
    更に教頭の妻である理事長は瀬尾先生と不倫の仲にあり会議の始まりと終わりに人目を忍んでキスして抱擁する。机の上に押し倒された理事長を観ているワタクシのほうが「生徒が入ってきたらどうするねん!」なんつってスリルとサスペンスを味わう。苦笑!

    そんな密な時間もつかの間、瀬尾は教頭に「すべてを知っている。俺の女房と寝るんじゃない。もう二度と会うな」と迫られ、挙句、理事長にもあっさりと別れを告げられる。生甲斐を失ったかのように絶望する瀬野は号泣するも、教室に戻った生徒の樋口は瀬野を労わる。どっちが教師なのか。笑)更に樋口は母親を亡くしたばかりだ。

    また生徒達の学校が全て、友達が全て、といった特有の感情を表現しながら、なんとかみんなの中に紛れ込んで普通なふりをしていたいという孤立しない願望にしがみつく生徒。そのためには人と違うことをしないこと。教師からの特別扱いを避ける生徒。要は人より目立ってはいけないのだ。

    一方でそういった空気に溺れることなく自分の意見を主張し正義感の強い樋口。孤独が怖くないのだ。しかし孤独が怖くない理由も母を亡くしたことで既に孤独となっている現況に我慢していたようだった。終盤で「おかあさ~ん」と叫んで泣くシーンは完璧にやられて一緒に泣いた。

    教師の仕事も大変そうだけれど、一つの教室で30人の生徒と向き合う生徒らも大変なのだ。とにかく上手くやって行かなくてはならない。人が人と共に生きる限るどこかでせめぎ合い、どこかで摩擦を起こし、どこかに歪みが生じるのは仕方がないのだが、なにしろ、30人も居るのだ・・。

    やがて、生徒らの行動に対し「先生、あんまり解ってないね。」と樋口に言われ自信を失った今井は「退職願」を書いていたが愚鈍そうにみえた春山先生が、それを止める為に吐くセリフに心が打たれる。

    そして放課後、うさぎを吊るした主犯格の未来に樋口が「生き物はすぐに死んじゃうんだよ。お母さんだってあっという間に死んじゃった。だから一生懸命生きなきゃダメ。」と諭し「おかあさ~ん」と泣きじゃくる。その途端、今井先生は生徒たちが色んなことに無理をし我慢していた事に初めて気づき「二人ともごめんね。そんなに急いで大人にならなくてもいい。」と二人を抱きしめるのだった。

    学園ものっていつ観てもいいな・・。と思う。この舞台をみながら「あの頃」を思い出すからだ。あの頃の残酷さや楽しさや孤立感や連帯感、ざわめきや土埃の匂いや賑わいを、振り返り過ごした時間は愛おしい時代だったと思う。

    思い出は当時よりも美しく光り輝いているのだ。

    素晴らしい舞台だった。生徒たちと向き合い悩む、生真面目な女教師を主役に配置したのはやはり秀逸だったと思う。生徒たちの演技もさながらキャストらの演技力でも魅せた。そうしてやはり、本が素敵だ。

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    2010/11/06 01:30

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