われわれなりのロマンティック 公演情報 いいへんじ「われわれなりのロマンティック」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    「規範意識を問う群像劇」

     一組の男女の恋愛とも友情ともつかない十余年にわたる交流から、多様な人間関係を提示する秀作である。

    ネタバレBOX

     地方から上京して東京の大学に入学した永野茉莉(小澤南穂子)はフェミニズム研究会で東京出身の同級生・橋本蒼(小見朋生)と出会う。彼らは先輩の五十嵐明里(川村瑞樹)の導きのもと同じく新入生の松村理子(百瀬葉)とともに日々ジェンダーについて論じ将来を語り合う。次第に親密になる茉莉と蒼は卒業後も同じ集合住宅の隣室同士となるが、ふたりの間には友情とも恋愛ともつかない関係が続いていた。

     あるとき明里は仕事でフリーカメラマンの湯原千尋(飯尾朋花)と出会い親密な仲に発展する。しかしこのことが蒼との仲に綻びを生んでしまい――己を強く責めた明里はやがて皆の前から姿を消してしまうのだった。

     セクシュアリティについて多くを学び深く配慮したうえで制作したのであろう本作を観ていて、規範意識にあるときは救われあるときはがんじがらめにされてしまう人間の割り切れなさを痛切に感じた。茉莉と蒼のクアロマンティック・カップル以外にも、さまざまな性自認と性的志向の登場人物が織りなす秀逸な群像劇であった。その分やや図式的で説明的になってしまった感は否めず、特に終盤で明里の主導のもと皆が胸の内を語り合うセッションの場面と以降の語りはやや盛り込みすぎに思えた。

     出演者は皆健闘しており、特に思ったことは口に出さないと気がすまない多動気味な茉莉を演じた小澤南穂子の表情の豊かさに強く惹かれた。また松村理子は、陽気でズケズケと茉莉と蒼の仲を詮索する神経の図太さと、自身もレズビアンとして葛藤する繊細さを併せ持つ百瀬葉を、俊敏な体のキレととともにチャーミングに演じていて印象に残った。

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    2025/09/10 20:08

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