ハムレットマシーン 公演情報 サブテレニアン「ハムレットマシーン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    発表時の1977年では、独裁者にして東側の指導者スターリンの死(1953年)、東側の混乱の中で起こった
    ハンガリー暴動(1956年)、それに続く締め付けの時代を反映した作品なんだろうな……と思うのもつかの間
    映像や台本改変も行って首相の暗殺&国葬から2025年の現在に至るまで、東ドイツから日本までを「架橋」した
    手腕はすごいな、と。

    ネタバレBOX

    PCの立ち上げ画面かゲームのスタート画面を思わせるような、無機質なタッチで作品名を映写した壁面、
    簡単な座席や足場などで構成された舞台に登場した4人が、「これからハムレットマシーンを始めさせて
    いただきます!」のセリフに始まる、「ハムレット」など改変したような言葉を1時間近く何度も繰り返す……

    「ハムレットマシーン」はひとことでいうとそんな作品です。

    しかし、恐ろしいのは世界に何度となく起こった革命を経て、「ハムレット」こと英雄が最後は「ケンタッキー」
    「コカ・コーラ」「マクドナルド」に代表される資本の力に取り込まれて、ただの虐殺や凌辱を行う血も涙もない
    「蝿の王」(=ハムレット・マシーン)に堕ちてしまうことで、

    破局を迎えるたびに劇作品は何事もなかったように最初に戻って、どんなに抵抗しても人殺しの歴史の「やり直し」を
    強いられることでしょう。

    「東ドイツの話でしょ?」「歴史的な話でしょ?」と思ってこっちには関係ないとばかりに客席で見ている我々にも
    作家や演出家が手にする刃は容赦なく向けられていき、包帯グルグル巻きにされた「空虚な王子」ハムレットがあわや
    埋葬される場面では「あれ? これ? あの首相の暗殺を匂わせてね?」と頭をひねり、

    序盤からどんどん一部改変されていくセリフとともに抑圧者へのデモシーンが具体性をもって繰り広げられる場面では、
    「あれ? これって日本のデモっぽくね?」とますます疑念が募り、ある場面での「日の丸演出」でとうとう確信を
    もって「いつの間に日本の話になっちゃったんだよ……!」と恐ろしくなってくること請け合いです。

    セリフは発表当時の世相も考えて、検閲など避けたのか、意味深だけど後世から振り返るとああそういうことね、と
    気付くように書かれているのだけど、一部表現を「ウーバー」「スマホ」などにいじくるだけでまんま2025年にも
    通じてしまうのが息長い作品だなと。きっとそれは発表から50年近くたっても、共産主義と圧殺社会が滅び去っても
    ここで表現されていたことのコアな部分はいまだに生き残ってるってことの証左なんでしょうね。

    「プロンプするね」(さっき調べたら舞台俳優のセリフを助ける補助要員と、AIやコンピューターに指示を与える言葉の
    2つの意味があるそうで、おおっとなった)を最後拒否して、ハムレットを「支配」し虐殺者の役を与えようとする「神?」に
    全員で反逆するような表現があったのエモかった、そして最終場面では人間と機械の差ってどこにあるんだろうと考えてしまった。

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    2025/08/30 07:27

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