ミュージカル「ディア・マイ・ドクター」 公演情報 演劇ユニット「暇つぶしチェルトン」「ミュージカル「ディア・マイ・ドクター」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い、お薦め。旗揚げ公演?とは思えないほどだ。
    明治という新しい時代になっても 家父長制、男尊女卑という差別(制度)・偏見・慣習等に立ち向かう女性たちのヒューマンドラマ。いや奮闘劇といってもよい。脚本・演出は勿論、ミュージカルと謳っているから歌も見事。さらに出演者がスタッフ的な役割も担っており、まさに公演に向けてチーム一丸になって といった気概が舞台上に表れていた。特に 劇の要である歌唱指導は大変だったと思う。

    公演は、当時の状況や風潮を背景に 初めて医師免許を取得した3人の女性たちが、どうして医師免許を目指したのかを描いた 虚実綯交ぜのフィクション。物語は、3番目に医師免許を取得した高橋瑞をモデルにした高水せい を中心に、彼女たちの生い立ちや性格などを描き、女性にとっての閉塞感を浮き彫りにする。劇中の台詞「道は違えども、すべては患者さんのために」、その精神は現代に通じるもの。現代といえば、3人が医師になってから起きた感染症の大流行、それをコロナ禍と重ねることで、いつの世の人の心の在り方を巧みに織り込む。

    (上演時間:1幕55分 2幕65分 途中休憩10分)【B】

    ネタバレBOX

    舞台美術は、段差を設え 左右非対称の壁。それが古色蒼然としており当時の雰囲気を漂わせている。また 衣裳やサーベル等の道具にも時代を感じさせる拘り、その丁寧な作りに好感。舞台技術の照明も柔らかく、丸みを帯びた光の中で人物が生き生きと映る。そして無人のときは美しい光景として印象付ける。

    没落士族の家に生まれた 高水せい(一役2人〈青年期・中年期〉)、子供の頃から好奇心が旺盛で知識欲もあった。しかし 女に学問は不要で 早く良縁に巡り合い嫁になること。そんな時代閉塞に不満を募らせる。いつしか 人の命の大切さ、それを出産の手伝いをすることによって知る。同時に医療行為は出来ないという現実にぶつかる。

    男社会や家制度、今でいうパワハラ・セクハラといったハラスメント問題を点描する。その生き難い時代にあって、人間らしく生きたい、人の役に立ちたい といった熱い思いを歌で表現する。台詞という直接的な言葉ではなく、歌の歌詞にのせて しなやかに 強かに しかも情感豊かに表現する。そこにミュージカル劇としての真骨頂がある。

    明治30年代に流行したペスト、その対応に奔走した女医たち。それを令和のコロナ禍に重ねているが、当時は演劇・映画といった文化 興行は「不要不急」といわれ大打撃を受けた。確かに命は大切、しかし文化という灯は灯し続けなければ、いずれ廃れてしまうかもしれない。公演では、生き方や社会との向き合い方、それを 明治という150年ほど前の出来事を今に生きる我々にも分り易く伝える。その意味では一種の教育劇のようでもある。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/08/29 16:14

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