発表せよ!大本営! 公演情報 アガリスクエンターテイメント「発表せよ!大本営!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    「情報操作の恐怖をコミカルに描く」

     第二次大戦下の大本営発表に翻弄される軍部と市井のひとびとを、計算されつくした会話で重層的かつコミカルに描く2019年初演の再演である。

    ネタバレBOX

     1944年12月の海軍報道部の執務室では、代田中佐(津和野諒)と報道班員たちが日本海軍の本来の損害数と誤魔化した数の差に落胆しつつ、この事実をどのようにして公にすべきか苦悶している。語尾や言い回しを工夫するなどの小細工を繰り返しているその様がおかしくもから恐ろしい。損害が大きければ作戦部から報告許可がおりず、さりとて事実とは異なる数を報告しようものなら軍務局がそれを許そうとしない。こうした海軍内のゴタゴタに目をつけた正義の新聞記者上川(鍛治本大樹)や陸軍の高櫛中佐(高木健)からの介入で、発表までの混乱は極まるばかりである。

     はたして正しい内容の戦果報告がなされるのかという一連の顛末を観ていると、当局が情報操作をする昨今の政治状況を思わず想起してしまう。国立公文書館収蔵の一次資料を用いた歴史劇というだけあって厚みがあり思わず見入ってしまう場面も多かった。ただ中盤以降で結末がある程度見えてきて図式的に感じる弊はあったように思う。時折挟まれる市井のひとびとの淡い恋模様は、それでひとつの物語として成立しそうでやや盛り込みすぎに思えてしまった。思い切って軍部の描写にだけ絞って描いてもよかったのではないだろうか。

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    2025/08/28 14:37

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