こんなにもあなたが愛おしい 公演情報 Ichi-se企画「こんなにもあなたが愛おしい」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    #あないと
    面白い。継母と息子を中心とした家族劇。最近観かけなくなったストレートな家族愛に、日本の良き原風景を見るようだ。平凡で小さな物語だが、そこに多くの人が共感するであろう優しさが滲み出ている好公演。脚本も良いが、それを描き出す丁寧な演出と確かな演技が物語を豊かにしている。
    登場しない実母と遺した日記が肝。
    (上演時間2時間 休憩なし)㊟ネタバレ

    ネタバレBOX

    舞台美術は、上手に家族の家 加島家の居間-卓袱台や仏壇そしてラジオ、下手は段差を設え 上に福岡のFMラジオ局のスタジオブース。この2つの空間を巧みに使い分け、加島亮(36歳独身 同棲中、ラジオパーソナリティ)の心情を表す。シーンに応じて上手 二階部や客席との間の空間を街路と見做して行き来する。それほど広くない劇場内に、行橋市の実家と福岡のラジオ局(職場)という地方都市の風景を表す。

    舞台は 或るひと夏の地方都市、台詞も方言交じりで都会とは違った雰囲気を漂わす。この舞台全体の世界(観)が優しく温かくホッとする。説明にもあるが、亮は 幼い頃に母を亡くし、父 大二郎が再婚し新しい(継)母 八重子がきた。しかし 亮は八重子が嫁いでくる前日に亡き母が遺した日記を見つけた。さらに八重子も日記の存在を知ることになる。日記には、亮への愛情に溢れた言葉が綴られていた。一方 八重子は自分の子は産まず、亮へ愛情を注ぐが無視され馴染まない。遠足の弁当を作っても放り投げられる始末。亮は優しく美しい八重子を慕うことは、亡き母を忘れてしまうのではないか こわかった。長い間 胸の内に隠してきた思いを激白することに、それは八重子が末期癌で余命わずかということを知ったため。この遺された日記は実母の<想い>が詰まっているが、同時に亮の心を縛り付ける<重い>ものになっていた。日記に翻弄された家族。

    長い間疎遠だった2人の気持が簡単に通じ合うことはない。それをラジオを介在させパーソナリティという職業で語る、さらに「あんたのお母ちゃん」からの投稿という形で繋げる巧さ。父も亡くなり、その三回忌に帰ったきり会っていない。その父も夏(お盆)時季に霊として現す。生前は亮と八重子の気持ちを理解しつつ、何とか2人の仲を取り持とうと腐心する。過去と現在を往き来きするが、それを亮と八重子は 夫々1役2名で演じ分かり易く展開していく。

    照明の諧調によって心情表現を印象付け、衣裳替えと相まって時間の経過も表す。また音楽はラジオから流れる曲、日常何気なく口ずさむ歌「上を向いて歩こう」。終盤、居間から見る 行橋夏祭りの花火シーンが美しい。ちなみに、行橋夏祭りは1989年(昭和64年/平成元年)から始まったらしいが、それは亮が生まれた年であり 元号が変わる。それは生みの母から育ての母へ という意に重ねているのだろうか。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/08/23 00:29

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  • ご来場、ありがとうございました!
    一ノ瀬のり

    2025/08/24 09:36

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