夏の夜の夢 公演情報 theater 045 syndicate「夏の夜の夢」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い。シェイクスピアの原作を、その世界観を損なわず 現代風に分かり易くアレンジしている。当日パンフによれば、上演台本は5氏の翻訳を参照したが、できる限り似ていない日本語となるよう目指した と。その意味では、theater 045 syndicate版「夏の夜の夢」で、「演劇」という世界を強く意識している。
    (上演時間2時間 休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は中央奥に出捌け口、その前に大木。上手/下手は非対称の段差で、特に上手は上階部につながる階段がある。下手の天井部には三日月。天井を含め周りをY字の木々が囲う。そこはアテネの宮殿であり森を連想させる。高い天井部から覗き見る、そこに居るのは いつも妖精(界)、下の段差は人間界という区分けした空間演出も巧い。また情景に応じて中央の大木が移動する。

    本作は シェイクスピアの有名喜劇で、その内容は知られている。登場するのは、大別すれば人間(貴族)界、人間界で婚礼を祝う職人たち、そして妖精界である。その違う世界を錯綜させ混沌とした世界観を表現するが、本作では なるべく それぞれの世界の中で話を完結させ、その 纏まりを分かり易く繋ぎ紡いだといった印象だ。それは幻想的というよりは、人間界における滑稽さ や 妖精界における諍いが人間界を巻き込んで騒動を起こした。それは面白可笑しさというよりは、エゴで理不尽な行い。そこに人間臭さが立ち上がる。同時に妖精たちなどのダンス/パフォーマンといったエンタメ性も魅せる。このバランスある演出が好い。

    本作では、演じている役者の背景が人間界(裏舞台)、そして荒唐無稽な振る舞いを妖精界(表舞台)、婚礼を祝う職人たちは、劇中劇の登場人物といったところか。ラスト、いたずら好きの妖精パックが「舞台は夢と同じ」と語りだす。舞台の淵に立って、そこを境に内側にいる役者はいつも重労働。表舞台では生きる喜びを歌い上げても、幕の裏では涙する と。舞台人の哀歓を「夏の夜の夢」を借りて描き出しているよう。汗と涙を流した稽古、本番は無我夢中、終わってみれば泡沫の夢のよう、まさに舞台そのもの。悲劇として有名な「ハムレット」、その台詞「To be, or not to be: that is the question」は 二者択一という厳しい状況だが、祝祭性を表す喜劇は 何でもありの世界。この柔軟な発想が 舞台によく表れており、それが魅力とも言えよう。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/08/22 05:46

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