抜殻を握った僕たちは 公演情報 男澤企画「抜殻を握った僕たちは」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    未見の団体。見応え十分。
    説明にもあるが、自死をした人と残された人たちの言い表せぬ感情を描いた物語。命を絶つことの是非を問う内容ではない。その行為は人間だけがする選択、それによって、新たに生まれた感情がメインテーマ。それを人間以外の生き物の脱皮・羽化といった成長過程と重ね合わせた骨太作。

    高校 演劇部で脚本を書いていた男が 売れっ子作家になったが、いつしか書けなくなる。その もがき苦しむ姿は、よく舞台や映画の題材になる。前半は 承認欲求といった描き方だが、後半は それに止まらず 隠された その背景(心奥)と向き合うことによって前に進もうとする。周りの人たちも巻き込んで、再び時計の針を動かそうと…。

    ラスト、残された人たちが握らされた切ない思(重)い、その心情をスポットライトの中で語り、そのまま溶暗し場面転換する。その時に流れる優しい音楽や歌が心を和ませる。脚本に対するバランス感覚ある演出や 前説から本編への導入が巧い。また 脚本/演出の男澤博基さん(刻チームのみ出演)は、出番こそ少ないが、考えさせる重要な役所を演じていた。いわば物語の重石的存在。
    (上演時間2時間 休憩なし)【刻】

    ネタバレBOX

    舞台美術は、上手 客席寄りに和室と収納棚、下手は段差を設え その隅に公衆電話、中央に幕。全体は(高校)演劇部の部室であり、作家の日暮 蛹の部屋を表している。

    高校の演劇部時代と社会人になった過去と現在を往還して展開する青春群像劇。高校生にして優れた脚本を書く日暮、その彼の作品に憧れて途中入部した桑田幸宏。特に演劇好きというわけでもなく、平凡な学園生活を送っていたが、入部してからは明るく生き生きと活動する。そんな兄を妹 鳴海は温かく見守っていた。しかし(演劇)発表会間近に事故が起きてー。

    演劇部に関わった人たちは、社会人になってからも その時のコトを引き摺っていた。日暮は小説家になり、発表した作品も評価されていたが、最近は筆が止まっている。高校時代の事故とは、幸宏が担当した舞台装置(大道具)が倒れ、それによってケガ人が出て発表会も辞退することになった。(明確に描いていないが)責任を感じた幸宏は自殺してしまう。幸宏の自死に何らかの関わりを持った演劇部員やケガを負った目黒大和(野球部員で演劇部の手伝い)は、彼の死によって 言い表せない感情を抱くことになる。自死=魂が無くなった抜殻なのだろうか。遺された人たちは、その抜殻を握らされて、重く沈んだ気持のまま生きていくことになるのか。「抜殻」は色々な比喩として用いられている。

    書けなくなった日暮、次回作を高校時代の この出来事を題材に…編集者になった目黒は見守っている。一方、商業ベースで考えるライター 炭畑源治(男澤博基サン)は、目黒と激論を交わす。高校時代の仲間内、傷を舐めあって労わる甘さ。それに対し第三者(客観)的な岸畑は物事を冷徹に見詰める。1人だけ当事者ではない人物を配置する妙。その対比が遺された人たちが自らの気持と向き合うといった成長(比喩的な表現として「脱皮」「羽化」)へ繋げる。自死した幸宏のことを「忘れたい」から「忘れない」といった前向きな気持にさせる。幸宏は、日暮の作品の中で生き、遺された友達の心の中で生き続けることになる。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/08/21 21:54

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