八月納涼歌舞伎 公演情報 松竹「八月納涼歌舞伎」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

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    八月納涼歌舞伎『野田版・研辰の討たれ』を観劇。

    あらすじ:
    守山辰次は元は刀の研屋で、殿様の刀を研いだ縁で侍に取り立てられたものの、武芸はまったく駄目。家中の侍に打ちのめされた辰次は家老へ意趣返しをしようとします。ところが、仕返しのために仕掛けたからくりが元で家老は死んでしまい、辰次は家老を殺した敵として追われる身となります。仇討ちの旅に出た家老の息子二人に追われて、諸国を逃げ回る辰次でしたが……(チラシより)

    感想:
     今作を観る機会はシネマ歌舞伎しかないと思っていたが、息子たちで再演で観れたのは嬉しい限りだ。
     20年ぶりの再演ながら、時代は初演当時とかなり変わってきている。世界では戦争が至る所で行われ、混沌としている。
    舞台では、赤穂浪士たちの仇討ちで街は湧き上がり、やられたらやり返すという『義』がまかり通っていた当時と同じような事が、現実に起こっている世界情勢と重ね合わせている。
     今や野田秀樹の芝居は「夢の遊民社」の頃とはかけ離れ、悲惨な出来事を受け止め、己の舞台で描いているが、歌舞伎でもブレることはない。歌舞伎界隈の時事ネタや見立てはもちろんだが、歌舞伎特有の華やかさを借りながら、仇討ちに逃げ惑う守山辰次の「死にたくない!生きたい!」という叫び声は現代に至るまでの戦争犠牲者の叫び声だ。
    華やかさと軽さが相反するように闇が迫ってくるラストには唖然とし、「町民・守山辰次の叫び声は永遠に誰にも届かないのだ」と訴える劇作家の願いは絶望に等しく、終演後には座席から立ち上がれなかったほどだ。

     再演とはいえ、見過ごしていけない。
    料金が高いので、歌舞伎シネマで済まそうなんて思ってはいけない。
    歴史的傑作なのだから…。

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    2025/08/18 06:25

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