水星とレトログラード 公演情報 劇団道学先生「水星とレトログラード」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    かんのひとみさん恐るべし。そのまんまの存在で見事に作品を成立させる不思議。知ってる婆ちゃん家に寄って2時間弱ごろごろ時間潰してきたような気楽さ。だがとてつもなく面白い。とある老女の等身大の生活とSFとが鮮やかに融合。どんな作品に出ても正解を叩き出す化け物女優。今回はホームの劇団において悠然と決めてみせた。

    お向かいさん・田中真弓さんは声は死ぬ程聴いてきたが役者としては初めて観た。何かプレミアム。パンクブーブーの黒瀬純風味。

    良い役者ばっか揃えてる。駄目息子・青山勝氏はイジリー岡田テイスト。真面目な娘・みょんふぁさんも素敵。孫娘のリケジョ・中野亜美さんはスタイル抜群。
    娘婿の保険屋・宮地大介氏、お向かいさんの旦那・藤崎卓也氏はキャスティングするだけで作品密度が上がる。

    売れない漫画家・川合耀祐氏はかなり腕があると思う。

    中野亜美さんの親友リケジョ・鎌宮彩羽さんに見覚えがあって何だったかずっと考えていたが、3月にやった劇団員自主企画公演の『ぶた草の庭』だった。覚えてるもんだ。

    祖父(藤原啓児氏)の一周忌も近く、一人暮らしの祖母(かんのひとみさん)の様子を心配する娘夫婦(みょんふぁさんと宮地大介氏)。小説家志望のニートの孫(前田隆成氏)を送り込む。孫にある相談をする祖母。「実は私、同じ一週間をずっと繰り返しているの。どうにか脱け出す方法を見付けて頂戴。」

    ずば抜けて面白いSFコメディ。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    テイ・トウワが1996年にプロデュースしたKOJI1200(a.k.a今田耕司)「ブロウ ヤ マインド〜アメリカ大好き(Blow Ya Mind - I LOVE AMERICA)」。これをサンプリングした楽曲を2011年、tofubeats feat.オノマトペ大臣が『水星』として発表。多数のアーティストがカバーし、2010年代のアンセム(象徴)に。
    「めくるめくミラーボール乗って水星にでも旅に出ようか」

    レトログラードとはフランス語で「逆行」。通常の時計は針が円状に回転するが、これは針が扇状の目盛りの終点まで行くとバネにより始点に一瞬で飛ばされる機構。視覚的な面白さから生み出された。

    保坂萌さんの作品は二作観て合わなかった。多分居心地がいいと思う感覚の違い。だが演出が有馬自由氏だからなのか今作ははなっから面白かった。押井守の藤子・F・不二雄寄りというか。大林宣彦の『ねらわれた学園』テイストも許せてしまえる優しさ。『ドラえもん のび太の宇宙小戦争』の感覚。根源的なものに突き動かされるみょんふぁさんにやられた。かんのひとみさんの台詞、「子供に泣きつかれちゃしょうがないわね」。

    二つマジで笑えた台詞。かんのひとみさんがタイムリープの謎を解く為、Netflixでその手の作品を観まくる。だが気付くと韓国ドラマを観てしまう。「どうしても観ちゃうのよね。」
    邪魔にはならないが役にも立たない、いてもいなくても変わらないような、と酷い言われ方をする娘の旦那(宮地大介氏)。ふと手に持つ鞄をじっと見て「この鞄、俺のじゃない」と呟く。

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    2025/08/06 17:06

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