vol.41 「廃墟」、vol.42 「そぞろの民」 公演情報 TRASHMASTERS「vol.41 「廃墟」、vol.42 「そぞろの民」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    「そぞろの民」

    2015年初演作品を30分削っている。2015年9月19日、新安保法案が成立。「平和安全法制整備法」と「国際平和支援法」。外部からの武力攻撃に対し日本を米国が防衛する義務、日本の領域内で米軍が武力攻撃を受けた場合、日本が防衛を負う義務。解釈次第では日本は戦争に巻き込まれ加担する可能性の法制化。自衛隊を正規な日本軍と認めさせたい流れ。リチャード・アーミテージ元米国務副長官はかねてから日本に有事法制の整備を迫っていた。

    介護施設に入居している元大学教授の父(中嶋ベン氏)、勝手に抜け出して深夜実家でTVを凝視する。新安保法案が参議院本会議にて可決、成立。武力放棄、外交による平和維持を日本国の柱として訴え続けてきた人生の敗北。父は庭先で首を吊る。

    通夜が営まれる。
    次男、星野卓誠(たかのぶ)氏は新聞記者。その妻の週刊誌編集者、川﨑初夏さん。三男、倉貫匡弘氏は元AIエンジニア。その恋人、フリーライターの杉本有美さん。父の教え子だった週刊誌記者、寺中寿之氏。従兄弟のTV局勤務のみやざこ夏穂氏。沖縄からやって来る再従兄弟(はとこ)の長谷川景氏。介護施設の副施設長、小崎実希子さん。フィリピン滞在の外交官である長男、千賀功嗣氏はまだ到着しない。

    寺中寿之氏はスリムになった中西学っぽいゴツさ。
    千賀功嗣氏は舛添要一と中畑清を足した感じ。
    みやざこ夏穂氏は政治家顔、海部俊樹の若い頃みたい。※松本龍か?
    杉本有美さんは綺麗。

    同時に二作品公演するのだから配役を上手く分担するのだと思っていたらほぼ全員ガッチリどちらをも演らせていた···。狂ってる。何かの実験か?
    台詞が飛ぶ危ういシーンもあったがすかさず共演者が口を挟み成立させていく緊迫感。観てる方もビクビクする。

    父は何故自殺したのか?通夜の席で息子達兄弟を中心に責任の追求が始まる。敗戦の焼跡、瓦礫の山から国を再建し築き上げた戦後日本社会。何処で間違えたのか?何を間違えたのか?三好十郎の『廃墟』への70年後の返歌。
    是非観に行って頂きたい。

    ※寺中寿之氏の負傷の為、7月30日14時の『そぞろの民』は中止。19時の『廃墟』から千賀功嗣氏が代役に入る。8月1日14時の『そぞろの民』から中津留章仁氏!が代役に。マジか!?観れる方は是非!

    ネタバレBOX

    自分は信者じゃないので与えられたものを何でも拝む訳じゃない。何かよく分からない演劇。でも妙な魅力はある。中津留章仁氏の考えていることは掴みようがない。そのズレが笑いとして機能もするのだが。(国際問題と兄弟それぞれの人生の処し方とを無理矢理関連付けて戦わせるのは笑うところだろ)。

    細かな飲み食いが実は重要。冷蔵庫から缶ビールを取り出しコップと共にお盆に載せ配膳する。ちょっとしたつまみ。お新香を切り分ける。飲めない人には麦茶を。そういう見慣れた光景を基調として観客に世界を馴染ませている。

    父親はこう考えたのか?自我のない協調性だけの戦後日本人を生み出したのは自分達である。思想哲学価値観もなく他人の顔色を伺いその場の空気に合わせていく。その行き着く先が時局に合わせての新安保法案容認。自分が敗戦から学び目指した新しい価値観教育の成れの果て。この法案の成立は自分の人生の全否定であると独り首を吊る。その父の絶望を知って息子も首を吊る。自分には信念などない。周りに合わせていく協調性しかない。

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    2025/07/28 21:20

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