JUDY~The Greatest Unknown Squadron~ 公演情報 グーフィー&メリーゴーランド「JUDY~The Greatest Unknown Squadron~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    少しずつ演出を変えて再演している作品。
    実在した人物をモデルにしたドラマ(一応 フィクション)、反戦劇だと思うが…。劇場入り口に、モデルになった美濃部正少佐の写真(撮影当時は大尉)、そこに「卑怯者呼ばわりされる中、自分の信念を貫いた。大事な部下に、死刑のような無茶な命令は下せない」と決意が書かれている。その文だけ読めば肯いてしまうが、劇中では典型的な軍人としての本音や戦略が透けて見える。

    別団体の公演では、「特攻は美化させてはならないが、あった事実を風化させてはならない」と。美濃部隊長が率いた芙蓉部隊(員)は、別の意味で懊悩することになる。軍という階級(制度)、そこに見る意識の違い、さらに彼らの世話をする地元の人々の思いが交差する。少しネタバレするが、物語は 現代から戦時中に思いを馳せるような始まり、そのシーンが戦時中の上官(司令官等)の姿に重なるような描き。

    物語としては、知らなかった人物の存在、その思考・行動を興味深く観ることが出来た。今から考えれば 常軌を逸したこと、しかし当時の事情や立場を鑑みれば、当たり前なのかも知れない。それでも同意・共感は出来ない。先の「決意」が表面的と思われる台詞(言葉)の数々。舞台として 理屈ではなく、感じ入るか否かだが…。
    (上演時間2時間20分 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、前後二重の暗幕で 場景を手際よく変化させていく。幕を左右から開閉させるが、始めのうちは 真ん中で閉まりきらないため裏(手動)で補っていたのが もどかしい。劇場の奥行きを活かし、汚れた平板で作った基地 兵舎内。机等を置き、日章旗や旭日旗を掲げているが、基地の移転(藤枝〈静岡〉⇨鹿屋〈鹿児島〉⇨岩川〈鹿児島〉)に伴い置く場所が変わる。

    物語は、説明にある通り太平洋戦争末期、攻撃の主体は「特攻」であったが、夜間襲撃という戦法で戦果を残した芙蓉部隊を描いたもの。冒頭、現代の平和な様子・・明日のイベントで大量の生花が必要だったが、手違いで届かない。現場担当者はその対応に追われている。しかし責任者は、それぞれ役割・分担があり 自分の出番ではない、と手伝わない。

    芙蓉部隊は、(沖縄)戦線へ特攻する部隊の夜間誘導、戦果見届(後方支援)、夜間偵察、本土決戦に備えるため といった戦術。美濃部少佐(物語では新渡戸正造)は、自部隊員の無駄死にはさせない信念、一方 玉音放送を聞いても にわかには信じられず戦争続行(本土決戦)の意思をみせる。他にも、今更 和平なんか といった台詞。そこに当時の状況や(軍人としての)立場が立ち上がる。悪意ある(疑った)見方をすれば、あくまでも本土決戦を見据えての特攻反対のよう、もっと言えば 沖縄戦線を見捨て本土を主戦場に といった捉え方が出来る。そこに冒頭のイベント責任者の役割・分担があり、手伝わない姿と重なってしまう。本意ではないだろうが、そんな印象を持ってしまう。

    脚本・演出の沢村紀行 氏が 当日パンフに記した文は、反戦劇。実在した人物や隊をモデルにした戦争物。凄惨な戦争は 二度と起こさせない、記録だけではなく生の声、その記憶を伝えることも大切。しかし曖昧になる記憶の危うさも…。「制作委員会 発足」というペーパーにJUDYを上演し続けて20年とある。公演では、特攻作戦を拒否した正攻法のみでの戦いを描いており、あくまで戦時中における作戦・戦術。先にも記したが、特攻を美化しないが、あった事実もなかったことには 出来ないだろう。

    舞台として、衣裳や所作は当時を思わせるもの。役者陣のキビキビとした動作を始め、確かな演技力が好い。また三味線の生演奏など抒情味もある。
    次回公演も楽しみにしております。

    0

    2025/07/12 09:57

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大