グロリア 公演情報 ハイリンド×サスペンデッズ「グロリア」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    緻密なラフさが吸い上げるもの
    いたずらに密度を前面に押し出さず
    恣意的にラフな部分を作り上げている感じ。

    そのテイストがとてもうまく機能して
    よりたくさんのことが物語に吸い上げられていく。

    含蓄のある豊かな舞台でありました。

    ネタバレBOX

    終戦後のアメリカから現代の日本、
    そして過去の日本へと物語が綴られて
    ふたたび戻っていきます。

    それらをつなぐ糸にあたるものが
    とてもしたたか。
    役者のキャラクターを重ね
    亡霊を使い、映像を使って
    観る側を不要にタイトにせず
    でも、物語の時間と日米にまたがる広さを
    そのまま観る側に置いていきます。
    役者の使い方にも工夫があって
    手記を読むという入口から
    奥にずずっと取り込まれていく。

    人間描写の織り込み方が
    観る側にとって広がりがあって。
    重さはないにも関わらず
    くっきりと観る側にやってくる。

    いくつものシーンで
    どこかウィットを感じさせる日々の暮らしが
    密度と軽さを共存させながら
    しなやかにスライスされて・・・。

    主人公の性格や訪れる閉塞感、
    そのなかで生きていこうとすること。
    そして離婚した妻の想い。
    それらが、
    アメリカの牧師夫婦や
    戦中の祖母の描写とも繋がりあって
    幾重にも伝わってくる。

    3つの物語、
    現代では夫婦を演じたふたりに
    共通したものをふって
    観る側を世界に閉じ込めてしまうやり方が
    しっかりと機能して。
    気がつけば、キャラクターたちが
    生きていくことの肌合いに
    心を奪われている。

    終演後もゆっくりと深まっていく
    感覚があって、
    単に舞台上だけではなく
    その記憶の余熱からも
    このお芝居に込められたものを
    悟ったことでした。

    物語の構成も、役者たちにも
    安定感があって。
    その一方で
    観る側がゆだねることができるチャレンジが感じられる、
    とても魅力的な舞台だったと思います。

    ☆☆○★★★△△◎

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    2010/10/21 07:09

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