音楽劇 金鶏 二番花 公演情報 あやめ十八番「音楽劇 金鶏 二番花」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い、お薦め。
    日本のテレビジョン実験放送に関わる人々の努力と奮闘の群像劇。公演の魅力は、舞台美術を駆使し、当時の状況を音楽を交えテンポよく展開する。休憩含め約3時間近い物語だが、飽きるどころか 目が離せない。物語は色々なエピソードを盛り込んでいるが、それらが緻密に連関していく。それを観(魅)せる演出も手が込んでいる。

    本作は「金鶏 二番花」となっているが、9月には「金鶏 一番花」(池袋演劇祭参加作品)が予定されている。本作で、日本テレビジョン開発 第一人者の金原賢三がどうして これに取り組むようになったのか、その理由を語っている。その金原に焦点を当てたのが「金鶏 一番花」で、本作と併せ壮大なテレビの物語が紡がれるようだ。

    物語は、NHK放送劇団・第一期生の老女が、後輩・五期生の女性のインタビューを受け、テレビ放送の黎明期を回想する形態で進む。技術も人材も未成熟で、試行錯誤の繰り返し。しかし 気概と活気に満ち溢れていたことが窺い知れる。そこには戦後の復興を願う人々の姿がある。
    (上演時間2時間45分 途中休憩10分) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は 回廊のような作りだが、真ん中の空いている空間も上手/下手から舞台板を動かし情景を作る。正面は幕、所々にあるハンガーに衣裳が吊るされている。NHKと刻印された箱馬、TVカメラや照明機材。上手の天井には傾いた円形(パラボラアンテナ風)。会場の高さも利用し、別空間を作る。ちなみに円形は太陽やブラウン管を表しているようだ。
    下手に帝国放送効果団の演奏メンバー(ピアノ、アコーディオン、ファゴット、パーカッション、クラリネット)。上演前は設営音や喧騒が聞こえる。

    金原が子供の頃、ハレー彗星の接近により地球滅亡といった噂が流れた。彼は 母に死ぬ前に何がしたいか尋ねた。「歌舞伎がもう一度観たい。(浜松から)東京へ観に行くにはお金がかかる。歌舞伎の方からこっちに来てくれれば」と。そして東京高等工業学校の入学式で恩師から「金鶏は無限に金の卵を産み、国の何処かに埋めた。国が危機に陥った時それを掘り出せ・・その金鶏が埋まっている場所は君達自身の胸の中だ。それを掘り出して国を救え」と、勿論アイデアのことであろう。

    室内撮影は、光量が少ないとキレイに映せない。その熱量のため部屋は暑く、しかも人手不足でアナウンサーが映像関係の仕事を手伝っていた。スーツを脱ぎ下着姿で 上階から人形を操る姿が、滑稽であり奮闘でもある。この操り人形のパフォーマンスが秀逸で、無表情で、目だけは大きく見開き踊る。しかし強い照明光のせいで目を傷め、仕事を辞めざるを得ない といった苦悩もある。さて 幕に映した操り人形のシルエット、いろんな角度から映すが、それはテレビ撮影技法であり、ブラウン管のモノクロ映像。

    多くの人に言葉を伝える仕事 アナウンサー、そのマイクを前に忸怩たる思いが甦る。戦時中、学徒出陣で戦意高揚をするような言葉を発した。また戦地で銃を撃った人間が人前で放送できるのか、そんな苦悩が付きまとう。一方、GHQの文化担当部署であるCIEとのテレビジョン放送を巡る議論が興味深い。今後の方向性について、CIEの意向を尋ねるが、先方からは自分たちで考えること。そこに敗戦国としてではなく自立を促すような示唆。戦地スマトラで、慰問のために行った素人芸の「白浪五人男(浜松に縁)」、しっかり日本の伝統芸能である歌舞伎が出てくる。

    素人芸でも人の心は動かせる。この発想が、ラジオ放送 紅白音楽試合になり 今の「NHK紅白歌合戦」に続く。毎年 大晦日に行い続ければ、それは「文化」になる。CIEから敗戦国が「合戦」などと苦言を呈されるが、そこに黎明期の人々の気概を示す。
    音楽劇として全16曲、希望者には歌詞が配布される。音楽劇だから、場景に応じて合唱や独唱で聴かせる。特に出雲喜代子役の金子侑加さん と 黒柏繭役の中野亜美さんは印象に残った。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/07/09 06:01

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