グロリア 公演情報 ハイリンド×サスペンデッズ「グロリア」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    後世に残る作品!
    風船爆弾という特殊な武器を通して、現在と過去を知ろうという話でした。

    ネタバレBOX

    祖母が危篤状態のため病院に来ている男と元妻。男の経営する会社は借金取りに追われています。一方の元妻はMPO法人で働いていて、内戦で困窮している国へ子供を連れて調査に行こうとしています。自分の子供が危険にさらされるのを嫌がる男と心配ないと言う元妻の会話は全く噛み合いません。そんなとき、男は祖母の手記を読むことになり…、

    手記には、祖母は戦争中に風船爆弾を作る軍需工場で働いていたこと、最近になって当時アメリカでピクニック中の民間人6人が爆弾に触って爆死していたことを知り、戦争中のこととはいえ、さらに空襲や原爆の被害を考えれば比較にならないものの、自分も殺人に関わっていたことで心を痛めていること、次の世代にどう伝えたら良いのだろうかといったことが書かれていました。

    さあ、戦争中の日本のことを見つめ直そう。アメリカで爆死した彼らのことを想像してみよう。具体的に知ることで、戦時下の暮らしが見えてきます。具体的に想像することで、どのような人たちだったのか、なぜピクニックに行くことになったのか、彼らの人生が見えてきます。そして、我々にも戦争に伴う悲しさ、人に対する信頼や不信感、戦時下における町の危険性について少しは分かってくるかもしれません。

    役者さんが一人何役もこなす手法、何か後世に残るものを作りたいという思い、戦争を取り上げたことなどから、井上ひさしさんへのオマージュだと感じました。

    娘時代の祖母の役を男がそのままやる発想には敬服しました。とさかをかぶったチャボを真面目にやった佐野陽一さんや、看護師や祖母のお母さんを演じた枝元萌さんの演技には目を見張るものがありました。

    ところで、男の会社は人材派遣業でした。確信犯的詐欺に遭ったと言っていましたが、ちょっとイメージが湧いてきません。確信犯的詐欺といえば、実態の無い会社が相手を信用させて商品を納入させ、その商品をだまし取るという取り込み詐欺を思い浮かべますが、これはメーカーや商社が引っかかるものです。人を派遣しても実態の無い会社なら仕事が無いわけで、ただ帰ってくるだけです。

    単なる取立て屋への言い訳とすれば、あのしたたかな取立て屋なら看破ってほしいところです。あえて言えば、資金繰りが厳しいだけでも十分です。

    後世に残る良い作品だけに、この部分はきっちりつじつまを合わせておいてほしいと思いました。

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    2010/10/20 09:55

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