ひとくず 公演情報 映像劇団テンアンツ「ひとくず」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い、お薦め。
    児童虐待の実態を描きつつ、その先を見つめる心優しき感動作。「鳴り止まないアンコールの声に」という謳い文句に納得。何とも心が押しつぶされそうな内容だが、現実にある話。それを基に 一晩で「ひとくず」の脚本を書き上げたという。

    物語は説明通り、少女 鞠を地獄から救ったのは人間のくずだった。しかし、救われたのは少女だけではなく、救った金田匡朗(通称:カネマサ)も精神的に救われたのだ と思う。鞠の境遇とカネマサの心の成長が共振・共鳴し大きな感動を呼ぶ。

    感動シーンには、必ず音楽と照明の相乗効果で印象付ける。その心憎い演出が物語を一層切なく そして優しく包み込むよう。泣き笑いといった感情の揺さぶりが凄い。
    (上演時間3時間40分 途中休憩10分) 【チョコ チーム】

    ネタバレBOX

    セットは 後景に観覧車(ライトアップすると<ひとくず>の文字が浮かび上がる)、中央は北村凜、鞠 母娘の部屋と金田匡朗の部屋の回転舞台。上手/下手はそれぞれの場景に応じて簡易セットを搬入/搬出する。それによって、テンアンツらしく分り易く テンポよく展開していく。物語は、成人した鞠の回想として紡いでいく。

    鞠が、十蟻刑務所へカネマサを迎えに行くが、入れ違いになり会えなかったシーンから始まる。小学生の頃 鞠は、母 凜の恋人に虐待され、電気もつかない暗い部屋で食事もなく一人置き去りにされていた。そこへ空き巣に入った金田。金田も母 佳代の男から虐待を といった同じ境遇で育った。部屋はゴミで溢れ、水を飲み 空になったマーガリンを舐める鞠、その姿は髪はボサボサで…。銭湯へ連れていき、手の根性焼きや胸にアイロン焼きの痕に繋がる といったように次々に場景が連関していく。

    鞠とカネマサの育った境遇は似ており、二人の幼い頃の様子を交差するように描く。そこに児童虐待の惨さを見せ、さらに教師や児童相談所といった第三者(行政も含め)が介入し難い もどかしさを浮き彫りにする。さらに、凛も母 千鶴から虐待を受けていた過去が明らかになる。娘の愛し方が分からない悲しみ。鞠とカネマサが、ラーメンや焼き肉を食べ といった平凡な日常が描かれているが、そんな当たり前が2人にとっては幸せ。カネマサにとって鞠の存在は絶対であり、約束は必ず守る。常習窃盗者から生活のために就職しようとする。そこに鞠という存在がカネマサを精神的に成長させているような。

    場転換は多いが手際よく それだけテンポよく展開する。飽きさせるどころか、舞台から目が離せない。感情を揺さぶるシーンは、効果的な音楽を流し、照明は白銀色系で人物が映えるようなもの。一方、カネマサが凛の恋人を刺殺するシーンは 暗転の中で音響のみ。トリガーアラートに配慮したかのような演出である。脚本はもちろん演出が実に巧い。
    次回公演も楽しみにしております。

    0

    2025/07/07 19:26

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大