口笛を吹けば嵐 公演情報 ピーチャム・カンパニー「口笛を吹けば嵐」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    斬新な演出
    私はメンバーが大学生のころからずっと観てきた辛口ファンなので、少し、観る目は厳しいかもしれません。
    今回の脚本(清末浩平)、かなり努力して改稿をして仕上げたと聞く。斬新な演出(川口典成)で、暗くなりすぎず、サーカス劇場・地上3mm時代に比べれば、劇としての見せ方はずいぶん進歩したと思う。
    ただ、プロデューサーがブログでしきりに「休憩込み150分の必然性」とやらを説いていたが、私にはそこまでの必然性を感じなかった。せめて2時間以内に収めれば、手腕が感じられたのだが。
    お尻が痛くならないように、シートを重ねてくれた配慮は有難かった。
    2時間20分も遣ってるのに、雑な描き方や不必要と感じる場面も私にはあり、不満が残った。詳しくはネタバレで。

    ※役者面会は喫煙者以外は会場内でさせたほうがよいのでは。全員、外で話していたが、歩道に張り出し、通行人の迷惑になっていたようなので気をつけてほしい。

    ネタバレBOX

    「三文オペラ」のパクリみたいな場面もあるが、やはり、作者・清末の好みであるアングラ調がのぞく。
    さんざん焦らせて、ケンが登場するところなど、唐十郎の「ジョン・シルバー」みたいだ。
    東大の駒場小空間でも、清末は崇拝する唐十郎の影響からか、撤収口の舞台後方を開放して、屋外へ俳優を出す演出をよく行ったが、今回はさらに、劇場入り口のシャッターを何度も開閉する(シャッターを開けたままの大音響の音楽は近所から苦情は出なかったのだろうか、と心配したが)。
    冒頭から「演劇、演劇、演劇は楽しいよ」と押し付けられ、正直辟易した。
    タイトルに冠こそないが音楽劇らしい。俳優は歌いまくる。
    離婚式の場面(「離婚式」の場合、新郎・新婦という表現はふさわしくない。「元」or「旧」が付くのでは?)。ワダ・タワーの「乾杯」が聴けたのはファンとしては得した気分だが、カラオケ場面がいかんせん長すぎる。
    こういう演出は大劇場で歌の得意なスターの見せ場を作るとき以外、あまり長く引っ張るのはいかがなものか。慣れていないらしい客は唖然としていた。
    むしろ、カラオケは続いていても、紗幕でさえぎって、幕前でケンたちの対決場面こそ丁寧に見せてほしかった。歌の場面をもう少し削っても、ケンを刺すに至った王の葛藤、金山のケンへの思いを描かなければ本末転倒の気がする。肝心の終盤にそのへんがぼやけてしまった感がある。
    金山役の八重柏は若手ながら演技が巧い注目株だが、声質のせいもあり、チンピラにしては印象がさわやかすぎた。
    手配師夫婦の羽田真、宍倉暁子がとてもいい。安心して観ていられた。若手で固めず、こういう俳優の招聘は重要なこと。
    名物化したワダの力石は不思議な役で、客演ならでは。
    坂本スミ子と唐十郎を足して2で割ったような顔のミヤコ役・小野千鶴も面白い。
    ダニースミス・プロジェクトのオリジナル曲はよかったと思う。歌詞の件。散文詩と歌詞は別物だが、歌詞の文章が字余り気味で長いせいもあり、耳に残らない。曲がよいので、口ずさめるほど主題歌の印象を残して欲しかった。
    通常は専門家による補作詞が行われてようやく歌詞が整うのであり、清末浩平は岩谷時子さんほど作詞の才能はなさそうなので、歌の多用はやめておいたほうが無難だと思う。
    ラストの場面が二段構えで、道具を撤収したあと、いったん幕を引いてからもさらに劇が続くので、いささかクドさを感じた。
    清末は昔から時系列的な描き方が不得手な傾向があり、アングラのときはそれでもよかったが、現代劇の場合は時間の経過をしっかり示してほしい。
    ケンを刺殺した王青年が突然出てきて、旅巡業に加わるが、あれから何年たっているのだろうか。スクリーンを使っているなら、有効活用して歳月を出してほしかった。
    スナックの若い酌婦が占い師の老婆に化けて街頭に立つ場面もアングラ風味だが、唐突で取ってつけたように感じた。
    音響が会場に比して大きすぎるようで、会場を出ると耳鳴りがして不快だった。
    演出では、食べかけのバナナをハケる俳優からいきなり渡された通路際の客が、連れにバナナを見せて困惑していた。花ならともかく、こういう生物は処理に困るだろう。配慮が欲しい。


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    2010/10/19 06:55

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