公演情報
燐光群「KYOTO」の観てきた!クチコミとコメント
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2025/07/02 (水) 14:00
座席1階
エクソン・モービルなど石油メジャーが雇ったロビイスト(弁護士)の視点で描かれる、京都議定書の舞台裏。ロビイスト、ドン・パールマンを演じた円城寺あやの開幕から終演までの膨大なセリフ量には感服する。燐光群を代表する役者だが、2時間40分の独り舞台といっても過言ではない。わずかにセリフが飛んだりしたところもあったが、その熱演を汚すものではない。ただ、男性をなぜ彼女に演じさせたのか、最後まで違和感が残った。男性の俳優陣に適任はいなかったのか。
国際会議の舞台裏を垣間見せるという会話劇としては面白い。ただ、描かれた各国の駆け引きは今一つ臨場感に欠けたというのが素直な感想だ。利害が対立する多国による国際会議の場で出てくる取引材料は多彩で複雑。見せ方が難しいのは理解できるのだが。
また、京都議定書に至る地球温暖化問題の推移はIPCC(気候変動に関する政府間パネル)設立から説明されるのだが、たぶん、事前の知識がないと一連の流れを理解するのはとても難しい。パンフレットの「気候変動問題の基礎知識」を一読してから、あるいは事前に調べてからスズナリに行くことをお勧めしたい。
京都議定書の最大の価値は、温室効果ガスの削減量と達成期限について締約国に法的に義務付けたところにある。劇の最終盤でこの一番大切な交渉の状況が描かれるのだが、議長の専横的ともいえる指揮で議定書採択にこぎ着けたというのは本当なのだろうか。初めて知って驚いた。
また、石油ロビーの視点で描かれると書いたが、そもそも米政府(共和党)とつながりがあるロビイストが、正式な国際会議の室内に堂々と入れるものなのだろうか。こんなこと(ロビイストが会議場で暗躍して議定書をつぶそうとする)が事実なら、会議の運営自体がかなり不公正だということになる。これも勉強不足で知らなかったのだが、COP(締約国会議)のセキュリティーは相当緩いんじゃないかと勘繰ってしまう。
もちろん、会場の外から当時はまだあまり普及していなかった高級な携帯電話でサウジなどに指示するという場面もあったのだが。ちなみに、当時の米国製携帯電話の着信音はリアルだった。
演劇として、地球温暖化の国際会議という基礎的な部分を客席に伝えなければならないところに多大な苦労があったと思うが、説明部分だけでなく、せりふも全体的にとっちらかっている印象だ。もっとクリアにしてもらわないと、客席はおいてけぼりになる。このあたりを少し簡潔明瞭にしてもらえば、2時間40分という長尺にはならなかったのではないか。