公演情報
イキウメ「ずれる」の観てきた!クチコミとコメント
実演鑑賞
満足度★★★★★
演劇を初めて観るアートの仕事をしてる人(実は結構いる!)とシアタートラムへ。ここは間違いないものを、という思いで選んだ。「凄いものを観たことはわかるけど説明する言葉が見つからない」「こうなったら演劇もっと観たくなる」。その言葉に心から誘ってよかったと思った。
十数年前私が初めてイキウメを観た時もそうだった。鋭く繊細な戯曲、非現実的な展開に予見的とすら思えるリアリティを、目に見えぬ耳では聞こえぬものの存在を握らされる。無機質な美術の中言葉によって露わに立ち上がる生命の活発、有機的風景に息を飲む。照明と音楽、そして沈黙と行間の雄弁さ。ここにきて、ここまできてもなお劇団の、演劇の力を更新し続ける圧倒と魅力にただただ心身を揺すぶられる。
配役そのものが魔法の様にすら思える俳優の所業、美しさと悲哀。奇怪に侵食される世界、そこに浮上するのはいつだって可笑しく愚かで生々しい人間の姿で、今回ももれなくそれに射抜かれた。普遍的でない物語の中で普遍的な人間の業をどこまでも詳らかにする卓越した技術に目眩を覚える。イキウメがやっている事はずっと変わらず、それらが変わり続ける世界やずれ続ける人々に向かって放たれる。その鋭角に私は自身の愚かな生を見る。ずれているのはこの世界か、はたまたこの魂か。果たして。