骨と肉 公演情報 JACROW「骨と肉」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    座高円寺公演に続いての観劇。前作は政治(家)物、今作は企業物で再演とは言え8年を経て随分中身も変わったとの事。
    舞台上にリングが出現している。舞台奥行の半ばあたりにロープ2本を渡したリングの2辺から、こちら側が格闘(論争や権力闘争)の場、あちら側には椅子が並べられ、登場しない俳優の控えとなっている(照明は低く落している)。
    日替りゲスト出演者による選手入場のアナウンス(「あーーーおーーーコーナー、××××」と矢鱈盛り上げるやつネ)で登場人物の入場。紹介されるのは同社内役職の者たち。それでバトルと来れば、企業の内紛が題材と知れる。で、どこかで聞いたような・・と、ふと大塚家具という単語が頭をよぎる。ほぼ関心は無かったがそれでも聞こえて来てた程であるから世間的に随分話題になったのだろう。

    結論的に言えば、ドキュメントではないフィクションとして見るにしても、長年社長を務め大企業に発展させた既に老境の二代目(現会長)と、彼の長女である新社長の果してどちらに理があるかは、実際には具体的な話に立ち入らねば判別できない。そこを伏せて進んで行く話であるので、評価がしづらい、という事がある。
    勿論ストーリー展開の面白さはあるのだが、人の行動への評価はどんな状況に対しどう対応したか、であり、具体的言及を回避した物語の進行では、「これは女社長が良い側で会長が悪役?」いや実は「女社長に決定的な欠陥があったりするのでは?」とどっちを軸に観て良いのか迷ってしまう。(それが意図ならその通りになった訳だ。)
    割切って見れば面白い、かも知れないが(実際面白いには面白いが)・・といったあたりを書こうとしたが言葉が探せないので後日また加筆することにする。

    ネタバレBOX

    続きを書いてみようとしているが、だいぶ日にちも経った(何しろ記憶力も悪い)。
    芝居のオチはこう。長女が会長体制を転覆して再度社長に返り咲くのだが、元コンサルとして力量を持つ企業改革の側面や、時流に乗った販売戦略といった所では有能だが、売上は今ひとつ伸びない。物を生み出し、売り出す企業の本分の側面では、閃きや創造的営為が重要となる。その才能が突出していた会長との歩み寄りが「会社のために」必要なのでは・・との予感を認めざるを得なく感じている女社長の表情で幕が下りる。
    脚本の狙いとしては、両者一歩も譲らず!のバトルから、会社のために何が必要か、という一点で人は協同し得るはず・・というメッセージのように思われる。作劇は権謀術策が火花を散らす「リング上の試合」を主眼に置きつつ、最後は現実に目を向け、収まる所に収まるだろう、と落とす。トップの座を勝ち取っても船を沈没させては何もならない。物事の道理に「戻った」と見えた。
    しかし「物事の道理はどこにある?」という問い自体は、劇中から存在している。その問いには(具体的な事に触れない事により)答えず、伏せたまま最後に謎解きとなるのだが、「伏せた」状態でバトルの行方に注目させておく事に、成功した人は居るかも知れないが、自分の感じでは「肝心な事に触れずに権力争奪戦やってるな~」という印象で、そこに若干の(作劇上の)無理を感じた訳であった。
    とは言え、長女側も「会社のために」、会長側も「会社のために」行動しているという構図は組織の一つの縮図かも知れない。
    しかし手腕のある会長もとあるスキャンダルから一線を退くと言いながら、娘に任せておいたのでは埒があかないと社長復帰を画策。長女とまともに話し合うという事をやらなかった。だから権力の味が忘れられない会長に非があると見えるのだが、実はそうではなく、物作りの会社であるべきだ、なぜなら「それが売上に繋がるから」という考えは真っ当だ。一方長女の側は「悪弊があるから改善しなければ」という改良路線。物を作るという事が「上から降りて来た仕事」のようにこなすものとは違う、という根本を理解していないように見える(結構中盤から)。その危うさと、会長の性格もあっての暴挙で紛れてしまうが、本来なら第三者的目線からでも「会長への評価」「女社長への評価」が語られ(実際は社員の間でその程度のやり取りは交わされてるはず)、そこにある本質的問題は早々に観客の前に提示されていて良く、そこからどう問題解決に至る事ができるか、という所でハラハラドキドキ・・と行きたかった。などと身勝手な希望を書いても仕方ないが、物語的に薄さを感じた理由はその辺りだろう。

    そんなこんなの感想ではあるが、中村氏の企業物、政治物はやはり面白い。今後も愉しませて欲しい。

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    2025/06/30 01:19

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