金曜はダメよ♡ 公演情報 トツゲキ倶楽部「金曜はダメよ♡」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。
    逸脱を繰り返す物語だが、決して踏み外さないのは「登場する人物たちが、必死に生き残ろうとする」ところ。話が進むにつれて、物語は思いがけないものへ変容していく。少しネタバレするが、二重構成になった世界で語られる言葉は、それぞれが明るく前向きに生きるための 知恵と勇気に満ち溢れている。
    (上演時間1時間50分 休憩なし) ㊟ネタバレ

    ネタバレBOX

    舞台セットは 中央にわずかな段差を設え、上の平台に横長テーブルと椅子があるだけ。
    物語は、4人の男女が 山荘に忍び込んで 暗闇の中 懐中電灯を照らし、或る人物を探しているところから始まる。冒頭は ホラーの雰囲気充分。実は この4人は映画の登場人物という設定である。そして現実の映画製作関係者が登場する。この実在と架空の世界という二重構成(舞台セットも地下・上階の多層イメージ)で物語は展開するが、だんだんと現実と台本の中の人物が共振・共鳴していく。

    映画製作といっても脚本家、監督が集まりアイデアを出し、プロットを考えるといった段階ー脚本会議。映画の制作統括(登場せず、携帯電話での指示)の思いつきで、方向性がコロコロ変る。しかも、「13日の金曜日」はダメだが ホッケーマスクは使い、今までにない斬新なホラー映画を製作する という無理難題を押し付ける。それに振り回される脚本家たち。当初台本はボツになり、改めてアイデアを出す。登場人物も消去しようとするが、台本中の人物は消されないよう騒ぎ立てる。台本人物は脚本家の胸先三寸によって役の存否が決まる。それらも 全て姿が見えない制作統括の意思次第。

    抗えない運命なのか。台本中の人物、この場で映画台本と向き合っている人々のそれぞれの意味付けや立場が違っても、人の世は可笑しくも無常である そんな思いを抱く。それでも、自分が生んだキャラクターを活かしたい脚本家たち や自分たちの存在を守ろうとするキャラクターたち。自らの思惑を前に出せないプロデューサー。そこに理不尽な注文をつける制作トップへの抵抗というアイロニーを感じる。そして 桜井プロデューサーの脚本家たちに向かって「要望に向き合う前に出来ないって言うな!」とか、制作統括(電話口)に「映画はあんた1人のものじゃない、観客のものだ!」といった台詞が重い。そして脚本会議の様子を見ていて、口を衝いて出た言葉が「コンペ方式で」。

    この「ホラー」を「都市伝説」へ変容させながら、自分が思い描いた映画(台本)作りに向かう姿が明るく元気に描かれる。ここにトツゲキ倶楽部の真骨頂を見ることができる。現実に生きている人々、映画(台本の中)の登場人物、その両方の共通語は「生きる」である。そして役者陣はこの「生きる」を芝居の中で生き活きと演じていた。そこには安定した演技力とバランスの良さがしっかり観て取れる。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/06/26 11:53

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