料理昇降機 公演情報 劇団夢現舎「料理昇降機」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2025/06/22 (日) 18:30

    2005年にノーベル文学賞を受賞したハロルド・ピンターの不条理劇。

    舞台上には低いベッドが二つ、足の部分を角にしてほぼ直角に置かれている。
    開演すると下手側のベッドには若い男(ガス)が腰かけ、上手側のベッドでは年長と思しき男(ベン)が寝転んでタブロイド紙を読んでいる。二人ともに黒シャツに黒い吊りズボンという姿で、それぞれ黒い上着とネクタイ、帽子はベッドの脇のコートハンガーに掛かっている。

    (以下、ネタバレBOXにて…)

    ネタバレBOX

    中盤でこの二人は住処(すみか)を転々としながら組織からの仕事の連絡を待っている殺し屋らしきことがわかってくる。

    まず二人の気付かない内に扉の下の隙間から封筒に入れた十数本のマッチ棒が届けられる。だが、部屋のガスはメーター式で、コインを持たない彼らは火をつけて湯を沸かすこともできない。すると、壁に取り付けられていたダム・ウェイター(料理昇降用の小さなエレベーター)が動き出し、上から料理の注文が次々と送られてくる。どうやら、この部屋はこの建物がかつて食堂であった時の調理場らしい…。

    前半、自分の関心事にばかりかまけているガスに苛立ち、怒鳴ってばかりのベンが、上からの伝声管を通してのクレームにはやたら低姿勢となるなど、可笑しみに満ちたセリフが散りばめられている。組織からの連絡を待つ二人に、閉店しているはずの食堂から送られてくる注文…、冒頭のベンが読む新聞の記事からして不条理劇そのものなのであるが、登場人物の設定を細かく決めることを嫌ったピンターの反リアリズム作品だけに、理解しようとするよりも感覚で捉えるべき芝居であろう。
    衝撃的なラストシーンはピンターが晩年政治活動に没頭したことを考えれば、それなりの解釈もできるが、それとてひとつの可能性にすぎないだろう。そもそもピンター自身、ひとつの解答をもっていたのかどうか…。

    そもそも指令を待っている二人がドアの隙間からの封筒や、ダムウェイターの動きにああも驚き、怯えるのは何故なのか(普通だったら指令が届いたと思うであろう)、伝声管の向こうの相手は最初の者と終盤の指令を伝える者は別人なのか……様々な謎が散りばめられている。

    2人の役者は、このわからない状況と格闘して、緊密な舞台を創り上げていた。

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    2025/06/26 11:17

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