にんげんたち ~労働運動社始末記 公演情報 劇団文化座「にんげんたち ~労働運動社始末記」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    マキノノゾミの新作、文化座『にんげんたち〜労働運動社始末記』(初演)を観た。

    去年観た映画『風よ あらしよ』のおかげで、大杉栄が虐殺されるまでは何とか筋を追えたが、その後は、状況説明が全くないまま、場面展開が目まぐるしく、頭の中で漢字に変換できない台詞には、着いていくのが難しかった。

    今回の『にんげんたち』では、大杉は決して主人公ではなく、どこか可愛げはあるものの、人間的な迫力には欠ける人物として描かれていた。彼の死に対して、和田や村木が命をかけて「仇を討とう」とまで思った動機が、舞台からはよく分からない。

    大杉栄の唱えた無政府主義とは、いったいどんな思想だったのだろうか?
    あの時代に若者たちが命を賭けるに足るほどの何かが確かにあったはずだ。けれど、その「何か」が、今の観客には見えづらいまま、舞台は進んでいく。

    その中で、唯一、台詞が胸にストンと入ってきたのが、関西弁の和田久太郎(白幡大介)の言葉だった。登場のたびに、場の空気が柔らかくなり、芝居の温度が変わる。
    この作品を他人に薦めるかどうかは別として――
    白幡大介が、実に楽しげに和田久太郎を演じている姿は、一見の価値ありでした。

    観劇後、気になって瀬戸内晴美の『諧調は偽りなり』を買ってきた。舞台では見えなかったあの頃の輪郭が少しでも見えるだろうか。

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    2025/06/24 11:42

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