「ファイナルファンタジー」「やがて僕は拒絶する」 公演情報 劇団エリザベス「「ファイナルファンタジー」「やがて僕は拒絶する」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    青年の苦悩が詰まってる。
    2作品観劇。両方とも僕のあがきやもがき、苛立ちを濃縮還元にして制限時間内いっぱいにフルスピードで押し切ったような、俗に言って青年の苦悩をテーマにしていたが、見せ方も演技の質も全く違っていて、ほんとうに同じひとが描いた作品なのかと疑うほどだった。
    なんでも当パンの主宰のあいさつ文によると片方の作品が好きだともう片方の作品はキライになるように心掛けたそうでご多聞に漏れず、私もそのようになった。
    『やがて僕は拒絶する』の方は登場人物たちが自分の気持ちを素直に吐き出すことが多かったので、それぞれの苦悩がよく伝わってきたが、そのすべてが僕が僕を肯定するためにでっちあげるたくさんの嘘だとすると、言葉の持つ意味合いが反転するように思える演出が秀逸。
    一方、『ファイナルファンタジー』は、つまらない日常から全力で逃走しようとしている僕の話。
    現実なんてクダラナイぜ。っていう精神状態を中指を突き立てて大人に歯向かったり、世の中に対する不平不満をそーゆー仲間を集めてロックな音楽に乗せて歌ったりするようなわかりやすすぎるエネルギー行動に流れずに、何かのせいにしてヘラヘラ笑ってフラフラネトゲーに勤しんでいる『僕』の不健全さ、そのアナーキズムが最高。
    そして、大事な言葉をあえてサラリと受け流すスノッブさが、現代口語演劇をアイロニカルに表現しているようでかなりツボだった。
    どちらを観ようか迷ってる方は両方見たほうがいいとおもうけど、安全な場所からダメ人間を眺めていたいひとは『やがて僕は拒絶する』を、現実逃避が趣味なひとは『ファイナルファンタジー』を個人的にはお勧めします。

    ネタバレBOX

    両作品とも登場するのは僕の母、僕の彼女、僕の友人で、僕をとりまく身近な人々との対話が『僕は拒絶する』では僕の脳内において、『ファイナルファンタジー』では細々とした会話が僕の部屋で交される。

    ただこの作品のなかで特徴的なのは、僕以外の登場人物たちの実体が見えにくいというか、消失している、妄想の産物ですらあるように見せている点であろう。

    事実、彼/彼女たちは、それぞれ僕の『彼女』『友人』『母』を演じているに過ぎず、それ以上でもそれ以下でもない。だから、余計な感傷も感情移入も受け付けないし、無印良品の商品みたいにクリーンでドライなイメージだ。

    そして、彼/彼女たちの言動はとっても軽いから、自意識過剰の僕には重すぎる。重すぎるから、他者とのコミュニケーションをファンタジーである。と受け止める。なぜなら、そうしなければ現実をまともに生きていられないからだ。

    しかしそんな風にはぐらかして自分を騙し続けられるほど『僕』は強くないし、強くないと信じていたい。だからいつか心はぐしゃっと潰れてしまう。
    するともう、目の前には絶望しかなくて。死にたい、だなんて安易な欲望にすり替える。

    生きるか、死ぬかの瀬戸際で関わりあった彼/彼女たちとのオモイデを頭んなかに描きながら自己対峙するのが『僕はやがて拒絶する』であったのではないか、とおもう。

    この作品のなかで『僕』は28歳で派遣切りにあった障害者として描かれる。
    おそらく、生きることへの苦難や苦悩を障害者という形にして表現していたのだろうが、これらの情報は不要におもえた。
    そんな風な設定を整えなくたって充分伝わる内容なのではないか、と感じたのだ。
    それに、障害者だから健常者より生きるのがつらいよね・・・的な差別心がとても頂けない。
    僕が好きなら僕の糞を食べるべきだ、というくだりにも絶句した。
    (←しかも人糞はネタ的にも新しくない。ソドムの市とかピンクフラミンゴとか見てるひとたちに対して不親切!笑)
    更に、客入れの時に筋肉少女帯の『踊るダメ人間』がヘビロテされてて苦行の30分だった。
    ほんとにダメなひとは筋少なんか聞かないだろうし、踊るダメ人間のサビでジャンプしたりしないでしょ。笑

    あと気になったのは、物語が全体的に、ダメなひととはこーゆーひとのことを言うんじゃないだろうか。的な一般論の偏見で満たされているような感じがしてしまったこと。

    脚本のなかで唯一、すっごいオリジナルとおもったのは、パソコンけーたい破壊自殺のくだりと、僕の彼女に好き好き大好きとか超言いまくるところ。あれはすごくよかった。

    ネタバレ外にも書いたけど、この作品はとにかく空間演出が優れているとおもった。僕と対話するひとをひとりづつロシアンルーレットのように回転させて、『僕』の混乱をも表現する。キミもボクも地球だって、ぐるぐる回る。

    ただ、役者の演技についてはちょっと過剰だったような気はした。自分がどちらかといえば、辛い時にほんとにひとは辛いと言えるのかな、とか泣きたい時に泣けないことだってあるんじゃないか。とかおもったりする側だから、なのかもしれないけれど。
    あと、妖精ちっくな衣装も、正直言ってあんまり・・・だった。
    30まで童貞だったら妖精になれるとかいう都市伝説をベースにしてるっぽくて、そういうのもなんだかなぁ・・・苦笑

    というわけで、この作品に対して抱いた感想ははっきり言うと『嫌悪感』だった故、まんまと公演の意図に乗せられたのだけれど、
    この作品の次の日に『ファイナルファンタジー』を観る予定を入れていたので、一抹の不安がよぎったことも確か。しかし、それは杞憂に終わった。
    それどころか『ファイファン』最高!でございます。
    もっと言ってしまうと、ファイファンしか観ていなければ、満足度は星5つあっても足りないくらいだった。それほどまでにグッときたのだった。

    話のなかで言わんとしていることは『やがて僕は拒絶する』と同じではあるものの、『僕』と僕をとりまく人々のそれぞれの生活感が身体に染みついる感じがして、説得力が凄まじかった。

    『僕』は観客のいる客席という現実から背を向けて、ひたすらネトゲーというめくるめくファンタジアと向き合っているわけだけど。そんな態度であるくせに、ティーシャーツの背中には『僕』という意思表示をしっかり行っていて。
    僕は確かに今ここに存在しているということを叫び、訴えているようだった。

    『僕』と世界を繋げるものは、ネトゲーと携帯電話だけで。それ以外の物、たとえばお風呂とか冷蔵庫とか、スイカとかそーゆーものは普通にあるけど、適当に抽象化されている。ドアなんて、普通に透明。日常会話も普通にあるし、友だち・彼女・親とだって普通に話す。それなりに。
    まったく楽しくもない、生産性のない会話。一方通行の関係性。
    そしてだらだらと果てしなく続いていく日常。その倦怠感。わかるな、この感覚。そして「オレの人生、レベルアップするだけだから。」とか、「目が死んでるところが最高なんだよねー」という台詞とか、自分が戦うのは怖いから、誰か代わりに戦ってくれよ。みたいな他力本願さとか。共感するばかりだった。

    だけど、いつか現実を直視しないといけない時は必然的にやってくるわけで。
    そん時は自分自身で戦わなくちゃいけない。終盤でコントローラーに操られてゲームの世界を走り回る『僕』は、現実と向き合うための訓練をしていたのかな。最後、『僕』はうつむきながら正面を向く。
    『クダラナイ日常』と向き合うことは絶望的ではあるけれど、それが希望だと信じるフリして生きるほかない。それが、『ファイナルファンタジー』だとおもった。

    この作品は、色んな事象がメタファーで彩られていたから、観るひとがそれぞれ想像できる自由度があって。押しつけがましくない感じが観ていてとても心地よかった。多くの台詞は鋭利なナイフのようにささくれ立っていたけれど、それ以上に空気感で何かを伝えようとしているように思えて、それもよかった。
    あと、全編に散りばめられたギャグセンスもすばらしかった。特に、性行為が『はばたき』のイメージっていうのはかなり面白かった。妖精役のひとの動き・表情も変態気質でかなり萌えた。Wあと、手塚の○○○。あれはズルイ。けど相当面白い。大人しく退場せずに、カーテンからチラチラと客席を伺う時のあの顔には奥ゆかしささえあった。笑
    あと、尾崎豊を『自殺』『恋人』『若者』のメタファーとして登場させる手腕がアイロニカルでいいとおもった。

    終盤のコントローラーに操られた僕が走り回るシーンでwowakaの『ロンリーガール』が流れた時はかなりビビった。あの曲、死ぬほど好きだから。だけど、なんでオリジナルの方じゃなかったのかはかなり謎。原曲のキーはもっと高いハズなんだけど。あと、歌詞の内容を重視するなら、ロンリーガール&ロンリーボーイの両面で作品をつくって、繋がりたいのに繋がれない、繋がらない僕たちとか、出会いたいのに出会わない、出会えない、出会うことを拒絶する僕たち、とかっていう形にしてもよかったんじゃないかとおもった。

    それから気になったのは、弾道ミサイルのくだり。『壊れゆく世界』を気に留めない僕、だったり終末感的なデカダンを表現していたのかもしれないけれど、ちょっと中途半端だったとおもう。今、日本は戦地でどこもかしこもすごいことになってる、みたいな混乱をもっと話のなかに噛ませてもいいとおもった。

    ともあれ、自叙伝的な2作品だと勝手に想像したので、次回作がどうなるのかかなり期待。

    0

    2010/10/16 15:57

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大