コラボレーターズ 公演情報 劇団青年座「コラボレーターズ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    このネタだと劇団印象の『犬と独裁者』が素晴らしかった。1938年モスクワ、反骨の天才劇作家ミハイル・ブルガーコフは独裁者ヨシフ・スターリンの評伝劇の執筆を依頼される。スターリンはブルガーコフの大ファンだった。本来そんな依頼を引き受ける訳はないのだが上演禁止、出版禁止で兵糧攻めに遭い困窮していたブルガーコフ、生活の為に執筆。しかしその作品『バトゥーム』も上演禁止とされる。ブルガーコフはそのすぐ後に亡くなる。

    今作はブルガーコフ役に久留飛雄己(くるびゆうき)氏。プロレスラーのMIKAMIみたいな雰囲気。
    妻エレーナに松平春香さん。ツイストを踊るシーンがカッコイイ。一番好きな演出。
    秘密警察ウラジーミルに小豆畑(あずはた)雅一氏。味がある。
    その妻エヴァに清瀬ひかりさん。印象に残る。
    秘密警察ステパンに鹿野宗健氏。この人のソヴィエト顔が最高。
    そしてスターリンに横堀悦夫氏。メイクが凝っていて本当にそう見える。

    冒頭、サイレント映画のようにクローゼットから飛び出てきたスターリンが寝室のブルガーコフを追っ掛け回す。この場面が秀逸。悪夢なのか幻覚なのか妄想なのか。腎硬化症により刻一刻近付く死の足音。
    時代はスターリンが「大粛清」を行うソヴィエト地獄の時代。1000万人が一方的な審理で処刑された。密告猜疑心裏切りデマ誹謗中傷、皆が殺されることに怯えて口をつぐんだ。

    引き受けたもののブルガーコフはスターリンの評伝劇をどうしても書けない。悩んで悩んで苦しみ抜く。そんなある夜、トンネルの隠し扉からある一室に通される。その秘密部屋の書斎で待っていたのはスターリン自身。劇作に興味があったスターリンはタイプライターで自ら書いてみせる。その代わりブルガーコフはスターリンの仕事、重要書類へのサインを代筆することに。

    デイヴィッド・リンチ的な神経症の妄想を思わせる物語。夜な夜なスターリンと密会して一緒に作業をしているなんて誰も信じない話。そのアイディアは面白い。

    ネタバレBOX

    第一幕80分休憩10分第二幕80分。
    皆寝てるかと思いきやきっちり観ていた。作品は元の戯曲がつまらない。余りにも古典的。驚きがなく、その通りに進んでいくだけ。後半は「デビルマン」っぽい空気感。演出と役者陣は最高級なだけに勿体ない。
    天井から吊り下げられた人の死体を白いシーツにくるんだものが徐々に降りてくる演出は良かった。だがツラの天井にずっと吊られていた白いシーツは形が人間には見えない。ラスト、何かあるんだなと思っていたが何もなかった。ただ降りてきただけ。多分何かしらの意味合いはあるのだろうが効果としてはイマイチ。

    本当に役割を交換して地獄の「大粛清」をブルガーコフが始めるぐらいやって欲しかった。それを必死に止めるスターリンとか。

    こういうネタで面白かったのはウディ・アレンの『カメレオンマン』。極度の環境適応能力を持つウディ・アレン演じる気弱なユダヤ人。周囲に溶け込む為、肌の色から何から皆に合わせてしまう特異体質。ある時、アメリカから失踪し数年後ドイツ・ナチ党大会のニュース映画にて発見される。ナチス高官に混じって「ハイル・ヒトラー」を叫んでいた。

    0

    2025/06/22 09:22

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大