カズコと、天使 公演情報 さるしげろっく「カズコと、天使」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    マリアのような絵
    一枚の絵画をめぐって繰り広げられる192年間の物語り。それぞれのエピソードが屋敷と絵画で繋がっている為に観終わった後に壮大な物語だったのだな・・と気づく。
    個人的には2幕の升ノゾミが演じる日比野香寿のキャラクターの立ち上がりがひじょうに素晴らしいと感じた。およそ人間離れした香寿の仕草や行動、奇声がゾクゾクするほどに状況を逸していた。彼女の登場によって物語はぐにゃりと方向が捻じ曲げられ近未来の戦いへの予感さえしたほど。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    第1幕・・2010年現在。
    再開発の為、町の史料館を取り壊して、テーマパークを作るという計画が持ち上がり、それに関して関係者らが会議の場を設けるも文化庁官僚と金井建設との癒着が発覚し、上記の計画案は破棄される。この史料館には勘治の描いた「和子と、天使」があり、後にこの絵をめぐっての物語へと紡いでいく形だ。史料館の職員らのコメディ的な恋愛もあり女の妊娠を知った男が「ああ、神様天使さま、こんなに嬉しいことはありません。」と言って絵画に駆け寄るセリフにヤラレル。


    第2幕・・2128年未来。
    反政府の強盗団が、史料館に元シリウスメンバーを人質にとって立てこもり、軍事警察と戦うも、裏部屋に隠されていた日比野香寿の登場により空気が一変する。彼女は知能障害者でシリウスの本部だった日比野司の娘だった。しかも香寿は誰か解らない男の子を身ごもっていたのだった。反政府の強盗団も元シリウスメンバーも軍事警察の囮の為に香寿を置き去りにしようとするも、良心の呵責に苛まれた寿樹が自らの命と引き換えに香寿を助ける。軍事警察によって撃たれた寿樹は「和子と、天使」の前までにじり寄って行き、果てる。
    ここまで観ると一枚の絵画がその時々の人々によって、まるでマリアを見つめてるような、心のバイブルとなっていることに気が付く。


    第3幕・・1926年過去。
    1幕での資料館となった譯への解説のような物語。なぜここに絵画があるのかを綴ったもの。勘治が妻で女流作家・天見と生まれてくる子を描いた「和子と、天使」のエピソード。


    終盤・・エピローグ
    そうして物語の終盤に第2幕に登場した日比野香寿が未来を見つめて戦いを挑むように無造作に髪を束ねて1枚の絵画のキャンバスを破って史料館から外へ脱出する。外の世界は眩い光が点在する新しい世界だ。まるでブラックホールから抜け出る瞬間の描写だ。ワタクシの最も好きなワンシーンだ。
    だから、この後、彼女がどんな風に生きていくのかもひじょうに興味を持った。出来るならば、ロックに日比野香寿を主軸にした物語を書いてほしいくらいだ。知能障害者で特別な能力を持った少女。そんな空想を考えながら帰路に着いた。
    あ、そうだ。自分で書くかな・・。5行くらいならワタクシにも書ける。笑


    全体的にコミカルな場面が多く楽しめると思う。第2幕が最も好みだった。強いていうなら軍事警官と戦う場面はもうちょっと緊張感があったほうがワクワクしたように思う。それにしても香寿のキャラ演出の猿山は流石だと感じた次第。
    すんごく良かった!

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    2010/10/15 17:19

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