夢ならなおさら覚めてくれ 公演情報 中央大学第二演劇研究会「夢ならなおさら覚めてくれ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    公演で描きたかったことが暈けた印象だ。
    物語は、或る男の 過去と現在を行き来し、その間の意識・対応の違いを描いた成長譚。説明にある通り、中学2年生と教師2年目という10年間、子供と大人という違いを描いている。しかし「大人」とは?という抽象的な問い掛けが前提にある。時間の経過の中で人間的な成長を描きたかったのでは?

    少しネタバレするが、過去も現在も同じように 家庭内の問題(毒親)に起因している。その描きが強調されるあまり、本来のテーマが翳んでしまったのが残念。当日パンフに、脚本・演出の大森ケイ 氏が「大人って色々な定義がある」そして「社会性」だと記している。物語は中学時代(一応 子供の頃)に出来なかったことが、大人になったら出来るようになるのか?精神(経験)的なことは勿論、年齢・立場や経済的といった諸々の条件はあるだろう。それらを ひっくるめて「社会性」というのであれば、子供と大人の間にある意識の違い、その成長を もう少し丁寧に描いてほしかった。
    (上演時間1時間35分 休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術…板は 黒床で周りを暗幕で囲い、所々に白い衝立の壁。上手奥に事務机にホワイトボード、客席寄りに楕円形のテーブル。下手は 学校にあるスチール机2つ。全体が鯨幕といった光景だ。内容から、死の淵ぎりぎりの 切羽詰まった状況を表しているようだ。いや 自死している。

    現在、主人公の沖田拓夢は 有名女子中学の新米教師(副担任)。このクラスに福原萌という問題児がいて、教師達を悩ませていた。夜の繁華街をうろつき、問題を起こし学校の信用に傷がつくことを恐れている。彼女の問題行動の原因は 家庭事情にある。両親は離婚し 母親に育てられているが、度が過ぎた教育と執着に 萌は悩まされていた。その鬱憤晴らしが非行の理由。

    10年前(中学2年)の拓夢、不登校の米谷大志にプリントを届けたことから、親しくなる。大志は映画(DVD)が好きで 毎日家で鑑賞している。ひょんなことから2人で夏休みに映画を撮ろうとするが…。大志の母は 精神を病んでいる(依存症?)ようで、家事を大志にやらせているため学校へ行けない。母は若い男と同棲を始めたが、彼は薬物中毒で ますます家の中は荒む。結局、大志は2学期に転校してしまい、同級生から自殺したことを聞くまでは、思い出しもしなかった。

    10年前の米谷大志と現在の福原萌の家庭問題をオーバーラップさせ、居場所がない子供たちを描く。毒親による支配と服従、それに対する反抗と自我の目覚めを強調して描いている。中学生の時は、無力で 結果として大志を助けることが出来なかったが、今なら生徒(萌)に寄り添える、といった違いは何か?子供の時に思いもつかない考えや行動、それが大人になるまでの間(経験)で身につく。翻って、それは我が身を守る術(すべ)として重い鎧となって自由を奪う。

    公演は、子供と大人の意識の変遷・変遍をどう描き伝えるかが狙いだったのでは? でなければ、時制を用いる必要がない。それとも自分の勘違い、解釈違いか? それが 毒親ー虐待描写に重きが移り、感情移入させているよう。さらに教師の盗撮等という低俗的な問題を絡めたことによって、興味本位のドラマになったのが残念。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/06/15 17:25

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